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第215 回 北村剛史  新しい視点 「ホテルの価値」向上理論 〜ホテルのシステム思考〜 

第215 回『インスペクション調査方針およびインスペクターが有すべき視点』

【月刊HOTERES 2016年04月号】
2016年04月14日(木)
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【調査計画】宿泊者の目線で調査すること(通常2 泊以上と思われるような施設であれば調査日数は2 泊とすること)。調査対象客室については禁煙ルームを予約すること。ホテル名に対する事前の偏見を払拭してから調査に入ること。調査員による評価のバラツキをできるだけ消去するため(別途確認しチェックするため)、またホテル旅館側にフィードバックできかつ有用な情報にもなるよう現地調査結果には丁寧にコメントを記載すること。客室の稼働状況には季節性があり、また外気温や湿度も季節によってことなることから、調査日時、調査日の天候や外気温および外気湿度を明記すること。【判断基準】調査員の主観が介在するような調査項目、例えば意匠性等については、内装、家具、照明あるいはデザイン、材質、使いやすさ等少なくとも3 要素以上を通じて感じ取れるかを確認すること。ほか、の顧客に対する対応も観察し、サービスの一回性はできるだけ排除すること。スタッフ接遇はシーン別に分けて確認すること(フロントスタッフの業務所作、接遇内容は、チェックイン時、チェックアウト時に分けてそれぞれ確認すること)。【フロント対応およびアテンドサービス】実際に現地で提供される客室との齟齬( そご) を確認するため、事前予約内容は事前に記録しておくこと。チェックイン後のアテンドサービスについて、顧客荷物の取り扱いをチェックするほか、客室での設置場所等を確認するうえで、荷物サポートを提案される場合に備えて事前に軽い荷物を用意しておくこと。【イブニングサービス】イブニングサービスでは、ゴミ箱に少しのゴミを残しておくこと。タオルを使用しその後の対応をチェックする際には、乱雑に使用しないよう心掛けること。コンプリメンタリーウオーターがある場合で、補充の有無を確認する等の目的で消費する場合には、感謝の気持ちを持って丁寧にいただくこと。【ルームサービス】ルームサービスでは温かいものと冷たいものをオーダーすること(例:カレーライス+アイスクリーム等。またすべておいしくいただくこと※なお、おいしさの知覚は温度と強く関係している。おおむね体温の± 25%以上(冷たいものは12 度以下、5 度まで)、高いもので62 度程度以上(御汁粉や粘り気あるスープでは50 度程度)を基本とする)。
 
 次いでインスペクターが適切に調査を行ない有用な情報をフィードバックするうえで心得ておくべき「インスペクターが有すべき視点」については、おおむね以下の通りとする。
 
• 顧客の声を運営に即座に反映できているホテルがトップクラスのホテルである。
•トップクラスでは、何かに包まれた感覚を覚えることがあるが、それは、清潔感、機能性、快適性の上にある、共感性、おもてなし等のゆえんである。
• どのようなホテル、旅館であっても何らかの潜在的な価値があると考える。
• 笑顔の効果は、忙しい中でもゆとりを感じさせることにある。
• ホテルにはさまざまな機能があり、その分さまざまな顔がある。
• ソフトウエアやヒューマンウエアがハードウエアを補うことができる。ハードウエアは時の経過に伴って劣化するが、ソフトウエア、ヒューマンウエアは引き上げ続けることができる。
• 顧客コンプレインを吸収する仕組みさえ有していれば時間の経過に伴ってソフトのレベルは向上しつづける。
•100 室程度であれば、丁寧なパーソナルサービス等が可能であり、大きく競争力を引き上げることも可能と言える。
• 客室に入った瞬間の臭いが大切である。臭いがあるということは、臭いの元があり、汚れがあると考える。
• 伝えたいコンセプトに対して本気であること、「本気」が伝われば心が揺さぶられる。
•人には社会的な承認欲求があり、自己を正しいと信じたいもの。その結果スタッフによる対顧客「共感」サービスは顧客にとって、大きな喜びとなる(価値がある)。
• 個々のホテルは、それぞれのハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアで構成されるため、同じホテルブランドであっても、その良しあしはホテルによって異なる。
• 修繕や清掃の徹底がホテルサービスの基本であり、清潔感の維持は十分に調査を行なう必要がある。
• 来店動機でのポジショニングが重要となる(同じ人でも目的によってホテルを使い分けている)。
•スタッフ接遇力、それは顧客配慮、知識、業務専念が相まってプロフェッショナルとなる。また冷静さ、笑顔、積極性、共感性、豊富な知識、話術を兼ね備えることが求められる。
• 笑顔は会話の潤滑油であり、笑顔を伴わない会話はプロフェッショナルな顧客接遇とは言えない。
• レストランは計算された雑踏感や計算された「よごし」が重要という視点もある。
• 一品一品丁寧かつこだわりあるプレートは、それら一品一品が顧客の食欲を刺激していく。
•ドアマンは、ホテルの安心感を伝えることができ、それ自体大きな価値を提供している。
• ハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアを使ってさまざまな形で五感を刺激することができる、またそれがホテルであり旅館である。
• 快適な客室とは、顧客のテンションを下げ、靴を脱いでくつろごうという気にさせる、つまり無防備にさせる客室である。
• 情報発信拠点としてのホテル旅館価値とは、顧客の情報ニーズがあり、そこに即座に答えることで生じる。
• ホテルは顧客と地域を結びつけるゲートウェイであり、多くの顧客に地域情報を発信することで、無二の価値を生じる。
• 偶然ではないハーモニーが注意を喚起し、心を震わせ感動させることができる。
• 地産品を使用しているということは、そこまで行かないと体験できないサービスを提供しているということである。その結果、ホテル旅館が地域のショールームとなることで海外にも訴求できる商品価値につながる。
• 地産品が豊富な場所であれは、レストランを擁することで十分にそれら食材を生かすことができる。
• 待ちのビジネスではなく、来る目的を作ることができるビジネス、それがホテルであり旅館である。
• 安全性や安心感の提供にはそれ自体に価値がある。
• 自然には力(価値)があり、それを生かすこともできる。一定クラスのホテルでは顧客は環境を買いに来る。
• ホテルや旅館側に明確なサービス哲学があれば、顧客はそれにそって解釈しようとする。• ハード、サービス、スタッフの接遇を通じて、顧客はホテルと対話ができる。
• エステについて、トリートメント、リラックスだけでは人が呼べない。それに加えて顧客はアクティブに新規性を求め貪欲になっていると考える。
• システム化されたおもてなし、それはサービス提供の順序であり、文脈造りと考えることができる。
• 幸せを感じるため4 要素(①自分らしく、②絆と感謝、③楽観的、④自己実現 ※慶應義塾大学大学院、前野教授)はスタッフがモチベーションを維持し輝くためにも重要な視点
と言える。
• ホテル旅館は「文化施設」でありそれぞれに歴史的背景を有している。
• ハードウエアがどれほど優れていようが、ホテルや旅館の「真意」が伝わるのは、「人」、つまりスタッフの対応次第である。
• どのような素材であっても、「見せ方」で輝きを放てる。
• 顧客を輝かせる空間演出、顧客が輝けるサービス、それがホテル流アフォーダンス(ハードだけではなく、サービス、ヒューマンで「顧客行動を誘発する(アフォーダンスと言う)」)であり、「シーンメイク」につながる。
• すべての顧客接点レベルの背後には、運営、組織、モチベーションというシステムの内容が関係している。

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