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番外編 「器」使いがきらりと光る店 

番外編 東北最古の陶磁器の産地が取り組む新たなチャレンジとは

【週刊ホテルレストラン2016年05月13日号】
2016年05月13日(金)
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㈱テーブルスタジオのショールームで行なわれた展示会の様子。「洋食にも使える和食器づくり」のテーマの下、「会津本郷焼」の窯元がそれぞれ個性を生かした作品が並ぶ
㈱テーブルスタジオのショールームで行なわれた展示会の様子。「洋食にも使える和食器づくり」のテーマの下、「会津本郷焼」の窯元がそれぞれ個性を生かした作品が並ぶ

福島県会津若松市の西隣にある会津美里町。東北最古の陶磁器の里と言われる「会津本郷焼」は、この地で400 年以上にわたってその技術を現在に受け継ぐ。ともすれば「伝統を守る」という鎧( よろい) の中で完結してしまいがちな匠の世界だが、「会津本郷焼」は新たなステージへと羽ばたこうとしている。そんな「会津本郷焼」の現状を探るべく、東京目黒区にある㈱テーブルスタジオで行なわれた展示会を訪ねた。

「会津本郷焼」の魅力を
より多くの人に伝えたい
 
「会津本郷焼」のルーツは今から400 年以上前、時の会津若松城主が、城の改修のため、当地(会津本郷村 現在の会津美里町)に職人を招き入れ、瓦を焼かせたことに端を発する。それから50 年余りの時を経たのち、この地で陶土(陶磁器の原料となる粘土質の土)が発見されるに至り、本格的に陶器の製造が始まり、さらに約150 年後、新たに陶石(陶磁器の原料となる岩石)が発見されると、その陶石を使った磁器の生産にも着手するといった流れで、産地としては、陶器・磁器双方の伝統を持つ全国的にも珍しい「会津本郷焼」は誕生した。
 
 最初は会津藩の産業として生産が行なわれていたが、その後、それぞれの窯元が独立して陶磁器の生産を開始し、全盛期には大小合わせて200 に及ぶ窯元や工場が軒を連ねる一大産地として隆盛を極めたが、現在は13 の窯元によって「会津本郷焼」の伝統と技術が今に伝えられている。
 
 そんな「会津本郷焼」が窯元全体で2年前から取り組んでいるのが「洋食にも使える和食器」というテーマによる新たな陶磁器の可能性だ。そのきっかけについて会津本郷焼事業協同組合の理事長である弓田修司氏は次のように語る。「もともとは会津美里町のPR をしていく中で、自然発生的に『会津本郷焼』も、もっとPRしなくてはいけないという流れになりました。そこで今回、町の『食』のPR を担当していた東京のシェフズバンクさんとテーブルスタジオさんとコラボすることになりました」
 
 とはいえ、これまでもそのような活動をしてこなかったわけではなかったそうで、弓田氏によれば「窯元単体では、東京で個展を開くなど独自に活動したり、組合としても、あらかじめデザインを決めて、それぞれの窯元でそのデザインに沿った商品を作るといった取り組みを行なってはきましたが、継続的な取り組みにまで発展しませんでした」といった苦労話を明かしてくれた。
 
 そこで今回は、まずテーマを「洋食にも使える和食器づくり」と決めて、それぞれの窯元が、それぞれの個性を存分に生かして、テーマに沿った作品を自由に作って提案してもらうというスタイルでPR 事業を展開することとなった。
 
「窯元によって、扱うものが陶器と磁器に分かれ、また窯元の当主の年齢も下は30 代から上は90 歳までと幅広いので、同じテーマでもバラエティーに富んだ個性豊かな作品が出来上がりました。それを実際にシェフズバンクさんが経営するイタリアンレストランで使用・展示してもらい、シェフたちからの使い勝手や、お客さまアンケートの結果をフィードバックしてもらいました。2 年目となる今年は、それを発展させた形で、昨年作った食器をさらに進化させようということで展開していくこととなったのです。とはいえ、あくまでも窯元自身が考える進化を加えてもらうということで、組合はテーマを決めただけです」と弓田氏は笑う。また、今回の「会津本郷焼」のPR 事業は、東日本大震災の復興支援事業に絡めた形なので、単発に終わらず、継続性を持って取り組めたことも大きいという。「今回のプロジェクトで一番重要だったことは、窯元同士のコミュニケーションというか、これまで以上に話をする時間が多くなり、よりつながりが強固になったことかもしれません」(弓田氏)。

会津本郷焼事業協同組合
理事長 弓田修司氏
自身が代表を務める「流紋焼」から白磁のパスタ皿を出品。「流紋焼」独特の「白」の美しさと家族で一つの器から取り分けて食べる楽しさをぜひ感じて欲しいとのこと

これまでになかった発想が
加わった作品作り
 
今回の取り組みについて、実際に参加しているメンバーはどのように考えているのだろうか?
  まずは、本企画のキーマンであり、自社のショールームで「会津本郷焼」の展示会を開催した( 株) テーブルスタジオの代表取締役 瀧藤久夫氏は次のように語る。「今回の取り組みをきっかけに、これまでのやり方に倣い、好きなものを好きなように作っているだけではなく、われわれが使う側からの要望などを窯元の人たちに伝えることによって、使い手に使いやすい物を提供するという視点が窯元さんたちに加わることができれば、『会津本郷焼』の今後のモノづくりにプラスになるのではと考えています」
 
 窯元を代表して今回の展示会に参加している「陶雅陶楽」の当主 佐藤大幹氏は「最初にこのテーマを聞いた時には、特に戸惑った印象はなかったのですが、和食器と洋食器の違い、特に重さと大きさについて考えました。その部分では気を遣いましたが、それ以外はいつも通りの作品で勝負しようと。色合いについても基本はいつも通りの釉薬(色や模様をつけるための薬品)を使いましたが、緑の面積を増やしたり、黒でアクセントを付けたりしてみました。この先は料理人さんにお任せします」とほほ笑む。
 
 同じく今回の展示会に参加している「草春窯」 工房「爽」の田崎宏氏は「普段から和食とか洋食とかにこだわらず使ってもらえればと思っていましたので、特に戸惑いはありませんでした。何を盛り付ける器なのかということが自分にとっては一大事でした。昨年はパスタだったので、イタリアンのコースの流れに沿っていけばドルチェかなと思い、ドルチェプレートにしました。盛り付けられたドルチェがより映えるような作りを意識してみました」と悩むというよりは、楽しむという感じで取り組んでいる印象だ。
 
 さらに流紋焼の当主として作品を提供している前出の弓田氏は「パスタを盛り付ける器を作ったのですが、最初はパスタの入るスペースが小さすぎて、あわてて大きく作り直したら逆に帽子のようになってしまったりと試行錯誤の結果、何とか完成に至りました。コースの一皿というよりは、イタリアの家庭でパスタをみんなで取り分けて食べるシーンをイメージして作ったので、小さくは作れず、重さとの戦いに苦労しました」と苦闘の日々を語るなど、各人各様の反応があるようだが、それぞれ積極的にこのプロジェクトに参加しているといった印象だ。

「陶雅陶楽」佐藤大幹氏
最年少の当主として「会津本郷焼」のPR 活動にも積極的に参加。今回は陶器の丸皿を2 種類出品。白い皿は、通常より緑の線を強調し、よりアクセントをつけ、黒い皿は通常は、茶色っぽい仕上がりになる飴釉を、窯の炊き方を工夫し、黒にした。

「会津本郷焼」の過去と
未来をつなぐための現在
 
再度、弓田氏に事業協同組合の理事長として、今後の展開について尋ねると「『洋食にも使える和食器づくり』というテーマで約2 年活動したわけですが、最初は本当に不安でした。そんな中、シェフズバンクさんとテーブルスタジオさんの力を借りて、プロジェクトを進めながら、それぞれの窯元が勉強してそれぞれに成長したと思っています。特に、ヒアリングと試作を繰り返す中で、これまでの工程でしてこなかった、自分たちの作っているものを見直すという作業を加えることができたというか、職人として器にしか意識がなかったことを痛感しました。今回の作品が、ある意味、料理を盛り付けられた状態でレストランの客に供される最終形までをイメージして作った最初の作品と言え、そこに作り手の意識が入ることが重要だと認識を新たにしました」とまずは今回の成果の大きさを語り、「もちろん来年もこの取り組みを継続していけたらと思っています。それ以外に、『会津本郷焼』のルーツというか、時代とともに変化してきたやり方を、もう一度たどり直して、自分たちの原点を見つめ直す活動にも取り組んでいきたいと思っています。もちろんそれを実現するためには各窯元の協力が不可欠ですが」と明確なビジョンを語ってくれた。陶磁器の産地と販売店・飲食店のコラボによって花開いた「会津本郷焼」の新たな可能性が、来年さらに大きな実を結んでくれる予感だ。

「草春窯」工房 爽 田崎宏氏
単独でも年に数回展示会を行なうなど積極的に活動。今回は白磁のドルチェプレートを出品。平ら感と高さを出したくて、底を厚めに作っています。使う人のインスピレーションでいろいろな使い方をして欲しいとのこと

「会津本郷焼」
会津本郷焼事業協同組合
(会津本郷焼直売所内)
〒969-6042
福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町甲3162
TEL 0242・56・3007
FAX 0242・93・6035
会津美里町観光ポータルサイト
http://misatono.jp/category/hongo
 
窯元一覧
かやの窯
福島県大沼郡会津美里町字川原町甲1099
 
閑山窯
福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町松原際2195
 
樹ノ音工房
福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町3271-1
 
酔月窯
福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町3174
 
工房 爽 草春窯
福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町3175
 
力窯
福島県大沼郡会津美里町字川原町甲1881
 
陶雅陶楽
福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町3180
 
陶房彩里
福島県大沼郡会津美里町字川原町甲1868-1
 
富三窯
福島県大沼郡会津美里町新町176
 
鳳山窯
福島県大沼郡会津美里町新町253-1
 
宗像窯
福島県大沼郡会津美里町字本郷上甲3115
 
宗像眞弓
福島県大沼郡会津美里町川原町北甲1773-17
 
流紋焼
福島県大沼郡会津美里町字川原町1933

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