コンラッド・ヒルトンの自伝『BE MY GUEST』 (PRENTICE HALL PRESS、1957 年、筆者蔵)。 1969 年に翻訳本が発行された。
ホテル史に大きな名を残したセザール・リッツ、そしてコンラッド・ヒルトン。一人は顧客の嗜好を知ることで、顧客の心をつかみ、もう一人は総支配人をホテルに住まわせることで顧客との距離を近づけようとした。
ホテルに住み込む総支配人
前回触れたリチャード・ハンデルは、加藤健二氏の著作によると、前日、接待などでどんなに夜が遅くなっても、毎朝必ず8 時にはロビーに姿を見せていたということだったが、実は、早朝5 時半には起床、朝食が済むと、ホテル内を巡回して7 時には事務室に入っていた、と本人から聞いたことがある。この習慣を可能にしたのには、一つの“秘密”があった。職住近接ならぬ職住同一、つまり、ホテルにリブ・インをしていたことが仕事に役立っていたというのだ。
筆者は一度、彼の“住まい”を訪ね、取材をしたことがあったが、1998(平成9)年のことで、次のように語っていた。