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公益社団法人国際観光施設協会編  観光施設メディアラボ 

ホテルの安全・安心21 石材の今と維持管理

【月刊HOTERES 2018年01月号】
2018年01月19日(金)
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いつまでも安心して使う
 
 どの石でも僅かですが水を吸う性質(吸水性)があります。このことを理解しておくことが、汚れ対策の大原則となります。水に濡れて汚れが一緒に石の中に染み込むことはもちろん、石張りの裏面に水が廻り込み表面が濡れ色になったり、エフロ(白華と呼ばれるモルタル分の析出した汚れ)が出て、思わぬ劣化に結び付いたりもします。汚れのリスクがある場合には、撥水(防水)効果のある処理材を予め石に塗布し吸水を抑制(防止)しますが、処理材の効果は恒久的なものばかりではありませんので、日常の清掃のほか、定期的な維持管理が必要となってきます。室内に好んで使われる大理石では、石質が花崗岩に比べ柔らかく酸(飲料や薬品)に弱いので、汚損の際には汚れの種類に応じた適確な洗浄法が必要とされます。さらに本磨きの床などでは、摩耗による光沢の低下を防止(回復)するために保護材(石材用ワックス等)を用いることや、摩耗が進行するのを想定して行なう研磨補修なども、維持管理の項目に加えておくと良いでしょう。
 
いつまでも安全に使いこなす
 
◆床の防滑対策:歩行時の転倒事故を防ぐには、段差をなくすことと、滑りにくい床にすることが挙げられます。滑りにくさは、滑り抵抗の値(滑り抵抗係数:C.S.R と、滑り抵抗値:C.S.R・B)で評価し、図5 の値が推奨されています。
 
 履物にも拠りますが、ちなみに本磨きや水磨きの床ではC.S.R 値で0.3 ~ 0.9、バーナー仕上げ(粗面)で0.6 ~ 1.1程度となり、表面に水や油分、石鹸水などがあると、1.0 ~ 1.5 程度その値が下がってしまいます。一方、滑りにくい粗面の床では0.9 以上になると、寧ろ躓きやすくなると言われています。
 
◆安全な表面仕上げ:床の表面仕上げは防滑対策に関係しますが、バリアフリー法に関する建築設計標準(国交省)では、客室に関する設計の要点に、「床や浴槽は防滑性と共に、体を傷つけない材料・仕上げとすることが望ましい」とあり、叩き仕上げなどの粗面仕上げの床はなるべく避けて、バーナー仕上げでもJ&P 仕上げ(バーナー仕上げにブラシ研磨をしたもの)とするか、防滑性を若干犠牲にして良ければ、レザー・フィニッシュ(凹凸面への皮肌調特殊研磨仕上げ)などが推奨されます。止むを得ず磨き仕上げにするときは、表面に防滑処理材を塗布することも有効と考えられます。
 
おわりに
 石も地球の天然素材であり、石油などの地球資源と同様、限りがあります。良質の石材が無尽蔵に採掘できる、換言すれば「安価な石材を惜しげもなく使える」時代は、やがて終わりになることを意味します。今のところ、石材が枯渇する話は聞きませんが、安価で惜しげもなく使える良質の石は、市場からなくなりつつあります。これは丁場(採石場)が一層、辺鄙な所に追い遣られ、採掘が難しくなっていることに他なりません。 これまで、石に纏わる安全・安心のお話をして参りましたが、天然素材の石を「いつまでも枯渇させずに使い続けられるようにする」ことも、大切な「安全・安心」に寄与しうる一つなのかも知れません。
 
 

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