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第1回 C&RM ㈱ 代表取締役社長 小林 武嗣 

現場主導のレベニューマネジメントからの脱却  第1回  単価1%アップが与えるインパクト

【月刊HOTERES 2018年05月号】
2018年05月25日(金)
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単価1%アップが与えるインパクト
 
 米国で全業態を調査した結果、次のようなことが分かりました。
 
①販売数が同じで単価を1%アップさせることができれば収益は11. 1%アップする
 
②単価が同じで販売数が1%アップさせることができれば収益は7%アップする
 
③販売数、単価が同一でコストダウンを1%カットできれば収益は3%アップする
 
 ①と③については、決算書で試算すれば自分の企業ではどうなのかがすぐに分かります。ぜひ、計算してみてください。①は、売り上げは部屋だけではないとは思いますが、ざっくりベースで、営業売り上げ×1%の数字を税引前収益に乗せてみてください。何パーセント伸びたかがすぐに分かります。
 
この調査結果が意味するところは、企業の収益とは「単価」による影響が最も大きいということです。この単価つまり販売価格を経営者が把握できていないというのは異常事態です。あらゆる業態で、販売価格というのは経営者がかかわっていますが、ホテルの場合は「レベニューマネージャー」という一般企業で言えば課長クラスに任せてしまっていることが多いようです。
 
 当時のレベニューマネジメントの実態この連載記事を始めようとしたきっかけの一つは、経営者があまりにも自社の販売価格を把握せず、価格のコントロールを現場に一任してしまっている事例が多いからです。せっかく、経営者が高いビジネスセンスで市場に受け入れられるホテルを計画し、調査を行ない、ホテル用地を取得し、建設し、素晴らしい設備や部屋を用意し、多額の費用をかけてオープンしたにもかかわらず、たまたま周囲のライバルとみなすホテルが安く売っているからと、安い値段で売り払われてしまったら、その投資に見合うリターンは得られません。これは、経営者だけでなく、GMにも同じことが言えます。ホテル内の人事やオペレーションを整備し、高い接客能力を発揮して十分なCSを獲得しているにもかかわらず、レベニューマネジメントを放置してしまい結果業績が得られない。それで責任を取らされてしまっては、何の意味もありません。
 
 ところが、この層は数字に弱いところがあり、日々数字を精査しているレベニューマネージャーと対等な知識で会話が成立しません。それが「苦手」という意識につながり、結果、企業にとって最重要な「価格」を放置してしまう。これは大変危険なことです。特に今後のホテルサバイバル時代においては致命的です。2015 年から本格化したインバウンド客の増大は社会現象になるほどのインパクトがあり、みずほ総研などは「ホテルが枯渇する」と警告を発しました。都内では2015 年から2016 年、高単価による販売によって、空前の収益を獲得したホテルも珍しくありません。これをもってして「レベニューマネジメント」と定義されたのですが、そこで行なわれていた多くの手法は「隣のホテルを見て値段を決める」ものでした。
 
 競合ホテルの価格を見て、値段を決定すると当時はぐんぐんと単価が上がっていったのです。これを「成功体験」としてしまったレベニューマネージャーが非常に多いのが実情です。
 
過去の教訓に学べ
 
 ところが、2017 年の半ばころから東京市場においては予約のリードタイムが非常に遅くなりました。2016 年までは予約のリードタイムは早くなる一方ですし、ホテルの値段もどんどん上昇していたのに、急速に需給ギャップが解消されていったのです。
 
 要因の一つは「ホテルがもうかるらしい」とさまざまな業態がホテルに参入してきたことが言えるでしょう。
 
 例えば、ホテル用に作られたわけではない単なる雑居ビルをホテルに仕立ててしまい、宿泊を提供するようなことも増えました。民泊も脅威となった一年でした。このような「既存ホテル」という仕組みから外れた形態の新規参入もあれば、もともとホテルをやっているような企業がどんどんホテルを立てていくことで客室数も増加していきました。 2017年は東京市場に異変が起きましたが、2018 年は大阪市場も厳しいかもしれせん。すでに厳しさを感じているホテルもあるでしょう。2018 年だけでも大阪にはメジャーなものだけでも30 以上のホテル建設計画があるそうです。
 
 しかし、ホテルというのは「さあ建てよう」と考えてから2年くらいはかかります。
 
 2016 年、ホテルの好況をみて計画を始めたホテルが、2018 年後半から2019年にかけてたくさんの開業を迎えます。もちろん、インバウンド増加の期待もありますが、だからと言って2015 ~ 2016 年のような「売れば売るほど入る」という状況は難しそうです。こうした「供給>需要」という図式になってくると何が起きるか予測することができます。これはまさに2000 年代に起きたことで、当時からレベニューマネジメントにたずさわっている筆者には容易に想像できます。

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