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酒のSP

林茂のイタリアレポート「Anteprime di Toscana 2019」(後編)

【週刊ホテルレストラン2019年06月14日号】
2019年05月08日(水)
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「Anteprime di Toscana」とは、その年にリリースされる主なトスカーナワインの公式試飲会。イタリア内外のワインジャーナリスト約150人を招聘して開催されるイベントから、トスカーナを中心にしたイタリアワインの道筋が見えるという。今年のアンテプリメはどう映ったのか。例年この地を訪れている日本人初のプロフェッショナル イタリアワイン ソムリエ、林茂氏がレポートする。

城壁と塔の街、サンジミニャーノの遠景。フィレンツェからバスで90分とイタリア国内外の観光客がアクセスしやすい立地にある
城壁と塔の街、サンジミニャーノの遠景。フィレンツェからバスで90分とイタリア国内外の観光客がアクセスしやすい立地にある

サンジミニャーノとモンテプルチャーノの解決策

 40社84品の出品があったサンジミニャーノは、人口8000人に対して300万人が訪れる観光地だ。ユネスコの世界遺産にも認定されている観光資源豊かなこの地のワイン、ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノにはブドウにさらなる力強さが求められる。収量を減らしたり、ワインの造り方を変えるなどの変革が必要かもしれない。こうした中でも丁寧な生産者や良い品質のワインは存在するので、この地のワインを選ぶにも生産者を知ると良いだろう。

 ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノの2016年は果実味もあり、十分な酸とタンニンもある。一方で、やはり醸造の過程や木樽の使い方によって大きな差が生まれている印象だ。サンジョヴェーゼやブルニョロ・ジェンティーレ100%によるエレガントなワイン造りが見られる一方で、タンニンを押し出す武骨なワインもまだ見られる。全体として細やかなワインと大雑把なワインに分かれたが、ここではまだ無名ながら、2007年創業の「モンテメルクリオ」(Montemercurio)が可能性を帯びていた。4万本と限られた年間生産量
だが、今後の伸びしろにも大きな期待が持てる。このほか「ポリツィアーノ」(Poliziano)、「デイ」(Dei)も良かった。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノより標高が高いこの地域では、色調が薄くても酸がきれいなワイン造りに進めばよい結果が生まれるのではと考える。

 

サンジミニャーノで行なわれたテイスティングの様子
サンジミニャーノで行なわれたテイスティングの様子
モンテプルチャーノで開催された食事会
モンテプルチャーノで開催された食事会

ブルネッロの回帰と多様化

モンタルチーノの景観
モンタルチーノの景観
トスカーナ州シエナ、ピエンツァのレストランにて
トスカーナ州シエナ、ピエンツァのレストランにて

 127アイテムをテイスティングしたブルネッロ・ディ・モンタルチーノの中で、あまり良くないと言われていた2015年も悪くはなかった。色調は薄いがエレガントで、小樽を使いすぎて果実味が残らないのもあるが、全体的には本来の魅力が引き出されているワインが多く見られた。このワインに関しては外国資本や異業種の参入が多く、一方で中小農家も存在し、楽しみはあるが全体とした統一感に欠けてきている面もある。また大樽への回帰については、過度な古樽の使用はサンジョヴェーゼ特有の酸化臭が出てしまうため、中樽を混ぜて使うところもある。黒い赤からオレンジを帯びたワインが多くなり、やはりかつてのブルネッロに回帰している感がある。

 

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイナリーを訪問。小樽と中樽を使い分けたワイン造りが目立つ
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイナリーを訪問。小樽と中樽を使い分けたワイン造りが目立つ

林茂氏が高評価したブルネッロ・ディ・モンタルチーノ生産者
 
Argiano
Fattoria dei Barbi
Capanna
Citelle di Sopra
Il Pino Fattoria del Pino
La Fortuna
La Poderina
Lisini
Poggio di Sotto
Sesti
Tenuta Fanti
Tenuta le Potazzine
Uccelliera

モレッリーノ ディ スカンサーノにも 可能性を見た

 そのほかのエリアでは、多くのワインジャーナリストがマレンマ地方のモレッリーノ ディ スカンサーノを高く評価していた。この地方の野生の馬を「モレッロ」と呼び、その馬に似た色をしたサンジョヴェーゼを「モレッリーノ」と呼んだという。2006年にDOCGに認定され、年間生産量は1036万本。生産者も少ないが、豊かな果実味に目を向けると、キアンティに匹敵する評価を得る可能性を秘めている。
 全般的に欧州、特にイタリアワインは食事に合わせるという考え方に基づくと、小樽を利かせたものはレストランではリストしにくいはずだ。和食や日本の食卓に合わせるならば、さらに遠い存在になっていく。ワインはマーケットに合わせて変化してきた歴史はあるが、酸が心地よくエレガントなワインに回帰している。小樽から中樽、大樽へ、さらにはセメントやホーローの使用を試みるなど、回帰と進化が重なって和食とも組み合わせやすくなってきた。アンテプリメに見る近年のイタリアワインの傾向から、日本における食とのさらなる親和性の高まりに期待したい。

林 茂(Shigeru Hayashi)
ソロイタリア代表
13 年間のイタリア駐在期間中、1995 年に日本人で初めてのイタリアプロフェッショナルソムリエ資格を取得。日伊の食文化交流への功績により「カテリーナ・ディ・メディチ賞」を受賞。パルマ・アリメンターレ協会による優れた記事を書いたジャーナリストに与える国際表彰「マリア・ルイージャ賞」を日本人で唯一受賞している。EATALY JAPAN ㈱代表取締役を経て現職。著書に「イタリアワインの教科書」「最新 基本イタリアワイン」「和食で愉しむイタリアワイン」など多数。

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