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第358回 北村剛史  新しい視点 「ホテルの価値」向上理論  ホテルのシステム思考 

第358回 『ブティックホテルの特徴と要件』

【月刊HOTERES 2019年06月号】
2019年06月28日(金)
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 この「こだわり」という意味において、以前、レストランを前提に、「こだわりある料理」と「選択肢の豊富さ」のいずれを顧客側が重視しているのかを調査したことがあります。その際も、「選択肢の豊富さ」と同程度に「料理のこだわり」が重視されているという結果でした。
 
 上記調査はレストランの食事メニューに関する調査ではありますが、「食事」を目的とするレストランとシンプルに「食事および滞在」を目的とするホテルと考えれば、ホテルの「こだわり」の価値についても、レストランと同様の傾向が見込めるものと考えることができます。
 
 また料金水準との関係で、どこまで選択肢の価値を用意するかも重要な論点となります。ラグジュアリーなブティックホテルと、廉価でリーズナブルなブティックホテルがある場合、それぞれのターゲットとなる顧客層が異なります。前者であれば、世界的にも数パーセントの客層を対象とすることから、こだわりぬいたサービスを軸に、十分な客室稼働率を確保するため世界的にも広域な市場をターゲットとする必要があるかもしれません。そのような場合は、さまざまな顧客層に対応しうるよう十分な選択肢や幅広い年齢層に対応しうるユニバーサルデザインも用意あるいは検討する必要があるでしょう。また、デザイン性だけではなく、高いレベルの清潔感を維持しつつ安全で安心できる宿泊施設として基本的なしつらえを有していることも求められます。つまり、ホテルとしての基本的しつらえを熟知した上で、個性的で独創性ある空間設計が求められるのです。
 
 次いで、「こだわり」の内容です。もちろん世界的な価値観の潮流に沿った概念である必要があります。ブティックホテルの場合は観光目的での利用が中心となるものと思われることから、リゾートホテルに対するコンセプト調査をご紹介します。
 
 ビジネス目的での宿泊であれば、共感されるコンセプトとして、「朝食」と「安心」が最も重視されていました。またシティホテルでは、それらに加えて「ちょっと贅沢」や「高級感」も併せて重視されていました。
 
一方でリゾートホテルでは、共感されるコンセプトの幅は広くなります。その他コンセプトでは、「美」や「癒やし」、「楽しさ」、「ワクワク」、「綺きれい麗な空気」等のさまざまなコンセプトに共感する傾向がうかがえます。つまり、ビジネス目的ではなく、観光目的で、共感されるコンセプトの範囲が広くなる滞在目的者にターゲットを設定した上で、コンセプトやブランディングに独創的で個性的なこだわりが顧客の支持を集めるホテルカテゴリーがブティックホテルなのです。
 
 一方で資産価値という側面からブティックホテルをとらえる場合はどうでしょう。
そのコンセプトがある意味普遍的に重視されるようなものであれば問題はないでしょうが、一時の市場の潮流に対応したコンセプトであれば、価値観の変化によって、大きくその収益性に影響を与える可能性があります。
また、万一市場の価値観の変遷・変化に伴い市場からの支持が得られなくなった場合、強い個性を帯びた建物がリテナントやリブランドの阻害要因となりかねません。また、運営上もブランディングが明確でかつ正確に公表されていない場合は、スタッフ接遇内容もそれに沿ったものとならない可能性もあります。顧客側も明確に事前期待としてコンセプトを理解していない場合には、来訪時の体験「認知」や体験「内容」に対してどのような「態度」をとればよいか不明瞭となりかねません。
ブランドメッセージやコンセプト設定が相当綿密に設計されたものであり、それをどのように現場に落とし込みができているか、またターゲット顧客の設定が当該コンセプトに合致したものなのか、価格帯次第では、豊富な選択肢も準備する必要もある等、高度な運営力と戦略策定力が求められるホテルカテゴリーと言えます。

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