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第25回 「おもてなしの精神」とは何か ~歴史に学ぶ接遇の極意~

第25 回 それは一つの作品から始まる

【月刊HOTERES 2015年08月号】
2015年08月12日(水)
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建物に生命を与える芸術作品
 
 先日、NHK のE テレで「墨に導かれ 墨に惑わされ 美術家篠田桃紅102 歳」という番組が放映された。桃紅さんと言えば、ザ・キャピトルホテル東急における作品でも有名だが、この番組では、コンラッド東京のロビーに掲げられている高さ5m の大きな作品「人よ」が取り上げられていた。
 
 桃紅さんは、同ホテルより「世界からお見えになるお客さまのために、花鳥風月の趣を表現してほしい」との依頼を受け、半年間、担当のアート・プロデューサーに相談しながら、アトリエで想を練った。そして完成間際、現場では周囲の制止を振り切って作業用リフトに乗り、手直しを施すことまでしたという。それほどの熱の入れようだった。
 
 番組では、当時の副支配人マーカス・シューラ―氏がこう述べていた。
「ホテルの最後のピースが展示されると、そこに『生命』が宿りました。ホテルが単なる建物から生き物になった重要な瞬間でした」
 
世界の優秀作品でおもてなし
 
 ホテルには、さまざまな芸術作品が飾られる。ホテルによっては、熱心に絵画を集めるところもある。
 
 かつての強羅ホテルでは、60 数点の名画が鑑賞できることをパンフレットで告知していた。
 ここに1 冊の画集がある。ホテルナゴヤキャッスルチェーン(当時)が創業20 周年を記念し、ホテル所蔵美術約450 点の中から80 点を選んで掲載したものである(1976 年発行)。当時の社長・梅島貞が記している。
 
「われわれが美術品の収集に努力しております所ゆえん以のものは、すなわち世界の優秀な作品をもってホテル全館を飾り、典雅のふん囲気のなかに、皆様をおもてなしいたしたいためであります(以下略)」
 
 美術作品で館内を飾ることもまた、おもてなしの一つの手法であると考え、収集したというのだ。言い換えれば「おもてなしの精神」を芸術作品に託したわけである。
 
 創業30 周年を記念して発行された『名古屋城のほとりで――キャッスルの風雪30 年』(1987 年)にも、このように記されている。
 
「全客室に最低1 点はかかっており、1、2、3 階ロビー、レストラン、廊下、階段の踊り場など至るところに絵を見ることが出来る。
 とくに1 階、ウィンザー(コーヒーラウンジ)横の廊下はキャッスルギャラリーとして毎月、月替りで10 数点の絵を展示しているが、これを楽しみにウィンザーにコーヒーを飲みに来られるお客がいるほどである」
 
まさにホテルの中の美術館と言える様子であったが、この芸術に対する強い思いは、1956(昭和31)年開業のホテルニューナゴヤ時代から始まるものであったようだ。
 
 だからであろう、創業40 周年記念事業では、当初1000 円の入場料を予定していた愛知・岐阜私立美術館名品展を無料にて10 日間開催した。その結果、3 万2000 人を集客したという。

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