1.2種類の業務マニュアルの特性
まず従来型の文字やフローチャート等できっちりと説明するマニュアルは、詳細に読み込むことによって初心者から上級者までが基本事項を確認出来る形式です。読み込み、深く理解するのに時間がかかるものの、必要事項をうまく整理すれば誰が何をどのタイミングで実施すべきかを網羅的に、また詳細に説明ができます。業務相互の関係も理解できます。ただし、読み込む時間がかかることが難点です。
それに対して動画や写真、イラスト、クイズ形式などを用いたマニュアルは新入社員にもポイント部分が直観的に分かるというメリットがあります。いわば、新人教育のための自習教材にも適したスタイルです。ホテル・旅館では現在、人材の流動性が高く、また他業界から転職してくるスタッフも増えています。そうしたスタッフに短時間で理解してもらうことが出来るのです。
これらの特性を踏まえて、自職場にはどのような業務マニュアルが必要かをご判断ください。
2. 2種類の業務マニュアルの実例(ゲストの火傷への応急処置)
以下、同じテーマで従来型と新しいスタイルの「ゲストへの火傷への応急処置」のマニュアルサンプルです。
2.1 従来型の業務マニュアルの例
2.2 新しいタイプの業務マニュアル
次に動画や写真、イラスト、クイズなどを用いた新しいタイプの業務マニュアルのサンプルです。
ゲストの火傷への応急処置
概要
本手順は【火傷の応急処置】の抜粋版です。

STEP. 1
【火傷の発生】応急処置をします
ポイント
トレーニングで手順を確認して料飲スタッフ全員が出来るようにしておきましょう。

STEP. 1.1
(動画)痛みがある場合、流水で最低15分間冷やす
ポイント
痛みを伴う火傷の場合には、流水で最低15分は冷やしましょう。
その際、低体温症にならないように注意してあげてください。

STEP. 1.2
(クイズ)冷やす時に氷は使うべきでしょうか。
どちらが正解でしょうか?
•氷を使っても良い
•氷を使ってはいけない

STEP. 1.2.1
氷を使う<不正解>❌
⚠注意
理由:凍傷になる恐れがあるため
STEP. 1.2.2
氷を使わない<正解>⭕
ポイント
流水で冷やすこと以外は医師の指示を待ちます。
********************
軟膏などは、医師の指示がなければ塗ってはならない。
※後日、後遺症が残る場合があるため
********************

STEP. 2
(必要に応じて)ハウスドクター/救急車の手配をする
ポイント
ゲストのケアをする人間と、ハウスドクターや救急車の手配をする人が連携します。
STEP. 2.1
ハウスドクターがいる場合
ポイント
100%受診をしていただきましょう。

STEP. 2.2
ハウスドクターがいない場合
ポイント
火傷の状態を確認し、躊躇なく救急車を手配します。
またその間、流水で冷やし続けましょう。
STEP. 3
⚠注記
火傷の応急処置に関して医師の一般的な見解を記述していますが、最新の医師の知見、ハウスドクター等の見解を必ずご確認ください。
©2025 Konica Minolta, Inc. & Miyama Consulting Group Inc. 本マニュアルサンプルは、株式会社ミヤマコンサルティンググループのノウハウをコニカミノルタジャパン株式会社のCOCOMITE(ココミテ)で表現しました。
※動画やクイズなどを実際にご覧になるには、こちらからアクセスをしてくださいますようお願いします。
まとめ
以上が2種類の危機管理マニュアルのサンプルです。
動画、写真、イラスト、クイズ等を用いたバージョン作成にあたっては、コニカミノルタジャパン株式会社 ICW事業統括部 ナレッジDX事業開発部様のご協力をいただきました。心から感謝致します。
この記事へのご質問やアドバイスが欲しい方は遠慮なく筆者にご連絡ください。このコラムはあくまで入門的知識をご紹介していますが、より突っ込んだアドバイスも可能です。内容によっては時間がかかる場合、個別回答でなく(質問者のお名前・所属を伏せて)記事上でご説明する場合もあることをご承知おきください。(連絡先表記 筆者深山宛)
次回は危機管理のトレーニングのあり方をご紹介します。皆様にONLINE記事でお会いできることを楽しみにしています。
筆者
深山敏郎(みやまとしろう)
所属・資格・実績等抜粋:株式会社ミヤマコンサルティンググループ 代表取締役、ホスピタリティ・コンサルタント。ビジネスビデオ「ホテル・旅館のマーケティング」(株式会社 シュビキ)共同監修。全日本能率連盟認定 マスター・マネジメント・コンサルタント、中小企業診断士、日本リスクマネジメント学会 特別会員、日本危機管理士機構 正会員、日本ナレッジマネジメント学会 正会員、健康経営エキスパートアドバイザー、異文化コミュニケーション学会 正会員等。
主要業務:ホテル・旅館の危機管理支援、BCP/コンプライアンス体制構築支援、覆面調査、ブランディング、リブランディング、オペレーション・スタンダード構築支援、各種トレーニング構築・実施。現在ホテレスオンラインにて「ブランドとオペレーション」連載中。
連絡先メール:toshiro@miyamacg.com