リノベーションとは、単なる改修工事やデザイン刷新にとどまらない。宿泊施設の価値を再定義し、時代の要請や地域の文脈に呼応しながら、新たな体験を創出する営みである。建物や設備といったハードの更新だけでなく、サービスやブランド体験、人材や地域との関わりといったソフトの改革を統合してこそ、真の成果が生まれる。
近年、国内のホテル市場は新築開発の勢いが続く一方で、建築費や人件費の高騰が進み、既存施設を再生・活用する動きが加速している。都市部ではブランドの再構築や大規模なリノベーションが進み、地方では歴史ある宿泊施設が新たな役割を担う姿が見られる。リノベーションはもはや一時的な対策ではなく、持続可能な経営のための重要な戦略であり、未来への投資そのものである。
そのアプローチは、老朽化対応のための修繕から、付加価値を高める改修、ブランドそのものを刷新するリブランディングまで幅広い。いずれにおいても、成果を左右するのは顧客体験の質であり、建物が新しくなっただけでは十分ではない。予約段階から到着、滞在、そして「また訪れたい」と思わせる瞬間まで、全体をデザインし直すことが求められる。
さらに、リノベーションは地域観光との関わりにおいても重要な役割を担っている。宿泊施設は単なる滞在の場にとどまらず、地域文化や経済と結びつき、交流を生み出す拠点となりうる。既存施設を磨き直すことは、地域の魅力を再発見し、未来へと橋渡しとなる。
本特集では、こうした多様なリノベーションの実像を多角的に取り上げる。経営戦略としての意義、顧客体験の刷新、地域との共創――。そこに共通するのは「変わるのは建物だけではない」という視点である。ホテルリノベーションの深化と真価を探ることで、次の時代に求められるホテルの姿を浮かび上がらせたい。
CONTENTS
48 総論 Literatus 代表取締役 CEO 池村友浩
54 対談 大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ×丹青社
58 インタビュー 東急
60 編集部厳選 ホテルリノベーション/ コンバージョン/ リブランド事例
札幌プリンスホテル/三井ガーデンホテル仙台/ ANA ホリデイ・イン東京ベイ/ハイアット・リージェンシー東京/
メルキュール東京日比谷/界 箱根/ THE BASEMENT HOTEL Oaka Honmachi /リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション/
hotel nansui /柳川藩主立花邸 御花/ホテルインディゴ長崎グラバーストリート/はいむるぶし
84 PICKUP パナソニック ハウジングソリューションズ
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本記事は月刊ホテレス2025年10月号 特集の一部紹介記事です。
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2025年10月号 特集 ホテルリノベーションの深化と真価
2025年10月号 特集 ホテルリノベーションの深化と真価
【月刊HOTERES 2025年10月号】
2025年10月15日(水)