福永 婚礼美容というとどうしても技術優先に走りがちですが、さまざまな角度から働きやすく、またいつでも戻れる環境を整えていらっしゃるのですね。
安田 出産後に戻れるよう福利厚生も整えています。働きたいという意識があれば、まずは会社として受け入れられるよう努めます。「忙しい土日に働けない」「働ける時間が短くてほかのスタッフにもうしわけない」「気が引ける」という声を聞きますが、まずは会社がきちんと受け入れる気持ちと、受け入れるための体制を整えてあげることが大切だと思います。限りある労働力や能力を最大限に引き出し、いつまでも生き生きと成長を続けてもらうことが私の使命であり、成長を見続けられることが私の生きがい、楽しみだからです。
福永 未婚者や出産経験のないスタッフには当事者の気持ちを理解することはなかなかできませんが、自身がその立場になったとき、お手本となる先輩が身近にいることで勇気づけられます。せっかく身に付けた技術をおめでたいこととはいえ寸断されてしまうことは、本人にとっても企業にとってもとても残念なことです。そうならないためには、まずは企業側の覚悟と働く側の覚悟が必要ですね。その覚悟が原動力となり企業としてますます力強く前に進むことができるのでしょう。
安田 アクションプランも導入しました。技術と売り上げアップを意識させるためです。人気バロメーターとして数字があることを認識させることで、単に技術だけではなくお客さまとのコミュニケーションを通じて、ご要望に応えることはもちろんのこと、もっとキレイになってほしいという思いからエステをお勧めしたり、もっとステキにかがやけるご提案をすることで、結果として数字を上げることができます。評価についてはお客さまの声のほか、会場プランナーさんからの評価もいただいております。さまざまな目線や切り口から評価をすることで自分が今、取り組まなければならないことが見えてきます。それをやり続けていくことで、結果的に各店舗や会社として掲げている目標を達成することができます。達成したあかつきにはスタッフ全員で研修旅行を実施しています。
福永 評価や数字に追われ心が折れてしまう若者も多いですが、その点はいかがですか。
安田 優劣をつけるために評価をしているのではなく、皆で成長してくために必要なことであることも言い続けています。社内面談も行ない、会社に何をして欲しいのか、どんな風になったら良いのかなどを聞いています。より働きやすい環境を提供することで成長ができるのであれば会社としてその要望を受け入れ実現、そうすることで会社が求めていることに対して自主的に取り組んでいこうという気持ちになってもらうためです。一方的な評価ではなく、手を差しのべながらともに成長していくことが大切だと思います。
福永 例えば、資格取得に向けたバックアップ制度や、キャリアアッププランなど、会社としての仕組みもお持ちでいらっしゃるのですか。
安田 さまざまな資格を取得するよう勧めています。スタッフの成長に投資することで企業も成長します。資格を取得したらレベルアップできるキャリアプランも掲げております。
福永 ところで、新卒採用にも力を入れていらっしゃると伺いました。
安田 はい。3 年前から新卒者の採用に向けた会社説明会を行なっています。婚礼美容業界ではめずらしいかと思いますが、美容学校ではなくても本人のやる気さえあれば技術の習得はできます。もちろん、相当厳しいチェックをしますので簡単にはデビューできませんが、ヘアメイクの仕事が好きであれば夢は実現できます。
福永 採用で大事にされていることはどのようなことですか。また今後の取り組みについてお聞かせください。
安田 技術者である前に社会人であることを重視しています。あいさつや服装、言葉使いなど、まずはこの基本的なことができなければお客さまとの良いコミュニケーションがかなわず、結果的に良い仕事はできません。また華やかなウエディングの仕事ですから、お客さまはもちろんのこと、会場さまやクライアントさまから見て、幸せオーラを持っている方を求めています。第一印象も持って生まれた素質や個人の努力ではないでしょうか。
会社説明会では現場で働いているスタッフたちが体験談を話します。より現実的に、具体的な話が聞けますので、それを聞いて共感いただいたり、興味を持っていただいた方にエントリーしていただくようにしています。今後においては新卒採用を継続して行なうとともに、待遇面でもさらに意欲的に働けるように技術や資格手当て、職務手当てを明確化し給与に反映するなどの就業環境の整備も力を入れていきたいと考えています。私たちビーイーは、ウエディング、ビューティ、ウエディングシューズ「ベニル」の三本柱でスタッフとともに成長できるよう努めてまいります。福永 女性を中心とした企業ならではの様々な取り組みをお伺いすることができました。また、スタッフの成長のために、技術を磨くための会社としてのサポートも、企業としての大切な仕組みだと教えていただくことができました本日はありがとうございました。
ビーイー㈱
代表取締役
安田仁実 氏
当時専門性が少なかった婚礼美容に疑問をもち、ブライダルという特別な日に特化したフリーのヘアメイクアーティストとして活躍。この想いをさらに広げたいと2002 年神戸に自身のスタジオ設立し、お客様や提携会場からの信頼を得て、ブライダルを中心に活躍の場を広げてきた。2009 年には日本発のウエディングシューズブランド「BENIR(ベニル)」を設立。さらに2010 年、より実践を重視した即戦力のあるアーティスト育成の必要性を感じ、ヘアメイクスクールの取り組みも開始。2012 年には京都、2014 年には大阪とスタジオの拠点を増やし、常に進化する企業展開を行っている。
㈱フェイス
代表取締役
福永有利子 氏
レストラン・ゲストハウスのウエディングプランナーから各現場の管理職としてマネジメントを担い、確実に業績を伸ばしてきた。2003 年にウエディングプランナー養成スクール講師をはじめ、06 年より大学にて非常勤講師として教壇に立ち、現在も教鞭を執っている。06 年堂島ホテル婚礼部長に就任、その後08 年同ホテル副総支配人に昇任。09 年には㈱フェイスを設立し、代表取締役に就任。現在は、ホテル・ゲストハウスを主に成約率向上を目的としたトレーニングや集客戦略立案・実践支援などのコンサルティングに加え、ウエディング全般にわたる支援を行なっている。著書・ウエディングプランナーじゃない、アカンのは上司や! 悩める管理職のアメムチ19 の育成術