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第5回 F&Bコントロール ~ホテル業の原価管理に於ける一つのビジネスモデル構築を目的として~

第5 回『コスト削減とロス』

【月刊HOTERES 2015年10月号】
2015年10月23日(金)
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1. 分散から集約
 ホテルの仕入れは一般的に少量多品種であり、大量仕入れによる値下げは難しく、また在庫の問題も出てきます。「品質を変えずに値下げ要求を」とはよく言われますが、現実的には同じ品物で同業他社の仕入れ値と比較して5%以上の開きがあるということは少ないと思われます。
 
 価格交渉は当然必要ですが、マネジメントが求めているほどのコスト削減効果はそれほど大きくないと考えられます。下げざるを得ないのであれば、やはり品物を変えるしかありません。
 
 また仕入れ値が変わらないのであれば、ポーションを変えて原価を下げるということもよく言われますが、それも一つの方法であることは確かですが、半面ポーションコントロールは手間ばかり増えてしまったり、何よりもお客さまはポーションの変化に敏感だったりすることを考慮しなければなりません。
 
 そこでコスト削減について、仕入れとレシピ変更というような通常の流れだけではなく、仕組みで考えるということがあります。
 
 分散型調理から集約型調理(メインキッチンシステム)に変えて行くというのも一つの方法であり、作業集約を進めることによって製造部門の生産性と効率化を図ると同時に加工品振替と共にその元となる原材料の分散化を抑制し、なるべく集約することを目的とします。
 
 メインキッチンシステムの考え方としては、各アウトレットのキッチンが独立して仕込みから製品化までの機能を持つ必要がなく、アウトレットのキッチンは料理の最終段階を担当するセールスキッチン、メインキッチンは仕込みを中心とするプレパレーション(準備)キッチンとする考えによっています。
 
 また各キッチンにおいても材料を集約するということは、レシピによる標準原価管理と違い、実務的に個々の材料を効率よく回し、ロスを減らす有効な手段になります。
 
 ただしあまり集約し過ぎると、いくら調理方法を変えたとしても画一的なメニューに陥る可能性があるので注意しなければなりません。
 
 またメインキッチンシステムを押し進めるには厨房施設、倉庫との位置関係などのハード面と調理部門の組織・構成などが大きくかかわります。
 
2. 企画商品・フェアメニュー
 
 宴会部門と料飲部門共通の事柄として企画商品・フェアなどが多岐にわたり、またそこにホームページの~限定特別メニューなども加わり、より複雑化している点が挙げられます。
 
 前項でコスト削減には材料の分散化を抑制することが有効であるとしましたが、一つの企画・フェアにはそれぞれ個別のオリジナルメニューが付随しており、その各メニューに応じた食材を常に保持しなければなりません。
 
 このことがコスト削減を進める上で大きなネックになっています。
 レストランでのフェアメニューはそのカテゴリー内で30%以上のシェアと5%以上の増収があってこそ意義があり、それに達しないまま継続したり繰り返すことはコストとのバランスから見ても合理性に欠けます。
 
 フェア・イベントの期間を明確にし、継続するのであればそれなりの理由—売り上げと利益が必要であり、それとは逆に販売不振のため実際原価率が40%を超えるような企画を継続することは飲食材のロスをただ単に積み上げることになり、そのような場合は早めにクロージングして行くなどの整理をしなければなりません。
 
 以前はロスが一番多く発生するのは調理過程であるという認識がありましたが、現在では加工品の流通状況からしてもそれは減少し、むしろこのような「売り方」に起因するロスの影響を見逃すことはできません。
 
 またコストに対する見方の一つとして、新企画商品・フェアについて、事前に損益分岐点分析が行なわれる場合があり、これはコストと販売数量、利益の関係について採算が合うかどうかの損益分岐点を示しますが、ここで言うコストは売れたときに発生するコスト—いわゆる標準原価であり、実務的に企画・フェアがスタートする前にキロ単位、ケース単位で準備し、仕込んで置く食材と期間中に在庫しておかなければならない食材などの実際原価とは本質的に違います。
 
 従ってこの標準原価と実際原価の違いを十分に認識し、販売不振の場合はこの実際原価がそのままロスになる可能性もあることを考慮しなければなりません。

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