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第236 回 新しい視点 「ホテルの価値」向上理論 〜ホテルのシステム思考〜 

第236 回『価値の目3 視点⑵とバリューエンジニアリング』

【月刊HOTERES 2016年09月号】
2016年09月30日(金)
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バリューエンジニアリング(VE)という経営視点
 
 ここで経営機能の一例として「バリューエンジニアリング(以下VE と言う)」という考え方を取り上げてみたいと思います。VE とは、「製品やサービス価値」、あるいは「事業の価値」を「機能÷費用」という式にて理解しようとするもので、投下する「経営資源を最小化」し、「最大限の機能」を提供すること(機能↑÷費用↓)で高い「価値」に結び付けようと考えます。そのためにどのような「機能」を提供して、あるいはどのようにすれば今の「機能」を低下させることなく効率的な経費コントロールが可能となるのかをさまざまな知見を投入しつつ追求しようとするものです。さらに中長期的な製品・サービスのライフサイクル全般にかかる諸経費や関連するリスクファクターをも考慮しつつ最適最善な事業構造をコーディネートしようとする考え方と言えます。この「価値」を引き上げるためには、顧客視点に照らし必要な要素を抽出しつつ「機能」をシンプルかつ強力に引き上げること、そしてそれを実現するために必要となる「費用」を長期的事業スパンからできるだけ抑えようとする経営判断の補助的思考方法なのです。
 
 ホテルサービスの消費では、顧客は何らかのホテルを利用する目的を有しており、そのような「葛藤」とそれに対する「解決」を繰り返すことで、その消費が長期的な記憶に自然ととどまることになります。VE とは、このように顧客が有する「葛藤」とはどのようなものが考えられ、かつできるだけ多くの「葛藤」を「解決」するためには製品やサービスにどのような機能を盛り込む必要があるのかを考えます。費用の最小化および事業構造の効率化を追求しつつ、顧客ニーズに照らした適切なサービス提供を実現しようとするものであり、まさにホテルの「利益増殖」をもたらす視点と言えます。
 
 前述のように個人消費時代において、時空消費であるホテルサービスを適切に、かつ常に変化する個人嗜好にマッチするよう調整して最適なサービスを提供するためにVE という視点は効果を発揮すると同時に、また参入障壁が低いことから常に新規参入の脅威にさらされているホテル業界にとって競争力を維持するという観点からも必要な経営視点と言えるものです。特に今後国内人口の減少、為替の円高基調等外部脅威も認められる環境において、まさにこのような費用対効果から最適かつ前提となる事業スパンを明確に意識することが、当該事業スパン内における強固な経営基盤につながるのです。労働集約型産業でありかつ長い事業スパンを前提とした事業用不動産を基礎としている装置産業でもあるからこそ、長期的事業スパンで長期的なライフサイクルコストを勘案し、さらには関連するリスクファクターまで視野に入れた経営につながるVE はまさに今求められる経営視点の一つと言えるのです。
 
 個人消費を前提とすると、団体顧客や法人顧客とは異なり、個人の心理に響く経営を行なう必要があります。そのためには、コンセプトに基づきコーディネートされたハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアを調整し統合することが求められもします。つまり、所有、経営、運営それぞれの機能について、個人客に対して徹底した機能を提供するためには、ほかの機能に関連し求められる視点も各機能を有するステークホルダーおのおのが十分に理解、把握し有している必要があります。そのような意味においてVE は、経営視点でありながらも、その実践には所有視点や運営視点が併せて求められます。またVE に限らず、例えば運営機能から考えて顧客満足度の最大化を実現しようとすれば、ハードウエアのしつらえについて長期的スパンから適切なハードウエアのコーディネートを考えることが求められるほか、必要なサービスとはどのようなものなのか、適切な投下資本とはどのような内容であるべきなのかという所有機能、経営機能からも同時にとらえる必要があるのです。一例としてVE を取り上げましたが、VEに限らず個人消費時代において、ハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアの統合や時空消費というホテル提供サービスの特徴に照らして、所有、経営、運営に関する利害関係者間の相互理解こそが、「強い」ホテルを実現させるのです。

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