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【レポート】長い歴史と古い畑を継承しながら進化を続けるワイナリー「グラント・バージ」

2023年03月13日(月)
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グラント・バージは長年良い畑を持ち、自社畑のみならず栽培家とも良好な関係を築いてきた。冒頭で述べたが、バロッサとバロッサ・ヴァレーは違う。今回、最上級のミシャックを含め試飲できる機会に恵まれた。以下、各ワインの特徴をレポートしたい。



スパークリング ピノノワール シャルドネ NV
ピノ・ノワール75%とシャルドネ25%のブレンド。使われるブドウの大部分は、アデレード・ヒルズとアルパイン・ヴァレー、そしてイーデン・ヴァレーの標高が高い冷涼な地域で栽培されている。
 
シトラス系の香りが豊かで、ほんのり黒ブドウらしいイチゴ様の香りやコクを感じさせる香りが感じられる。その黒ブドウ由来のコクとは違い、澱由来のビスケットのような芳しい香りも感じられる。泡の立ち上りも細かい。口に含むとクリーミーで繊細な泡が柔らかいテクスチャーを出しつつ、やや高めの酸味とピノ由来のふくよかさが感じられる。ミディアム~フルボディの辛口。
 
香りから冷涼さを感じさせてくれるスパークリングであるが、このスパークリングの良さはデリケートさにある。ピノ由来のふくよかさ、シャルドネのシトラス系の香り、そして全体をいきいきと、かつ、冷涼な産地ならではの引き締まった印象を出してくれる酸味がある。そうしたふくよかさと引き締めのバランスが良く、上質な泡のクリーミーさも合わさって、上質なデリケートさを感じる。このデリケートさは、さながらバレリーナのように、しなやかであり、軽やかで躍動感のある繊細なバランスの上に成り立っている。乾杯としてもだが、お料理とも合わせると違った表情が生まれる。料理人とソムリエの楽しみ(表現の幅)を増やしてくれる、そんな1本だ。
 
フィフス・ジェネレーション・バロッサ・シャルドネ 2021
このシリーズのラベルには、バージ家歴代の当主の名が刻まれている。フィフス・ジェネレーション=5代目は、グラント・バージに当たる。バロッサという、生まれ育った土地の風味を最大限に魅せてくれるシリーズだ。2021年のシャルドネは、バロッサ85%にイーデン15%のブレンド。
 
リンゴの果汁、繊細で甘く香る洋ナシ、ストーンフルーツ、グレープフルーツ、わずかにシトラスピールのニュアンスと、ラベンダーに似たフローラルさがある。果実の香りの奥に、ほんのりと樽由来を思わせる香りがある。
口に含むと、樽や澱といったふくよかさを感じさせてくれる風味に、香りにあるようなフルーツのニュアンスを感じ、小気味よい酸味とアフターにパッションフルーツのようなニュアンスを感じる。豊かで幅の広い果実の風味と、澱や樽からくるコクのある風味のマッチが素晴らしい。
 
このシャルドネは、醸造のコントロールがきちんとされていることに加えて、澱のマネージメントが秀逸だと感じた。久々に、飲んで驚きを得たワインで、フィフス・ジェネレーションの名に恥じない、バロッサの良さが凝縮されている。まず、シャルドネというとシトラス系の冷涼な香りか、過熟系の熟れた香りかという2択に近いイメージがある中、冷涼さと熟れたニュアンスのどちらも感じることができ、かつ、他のシャルドネには感じたことが無いようなニュアンスまで感じさせてくれる。バロッサを知り尽くした生産者ならではの、バロッサというキャンバスを教えてくれるワインだ。そして果実の良さだけでなく、香りだけの単調なワインにならないように、醸造に細心の注意が払われていることがわかる。丁寧な醸造は、ブドウ本来の香りを最大限に引き出し、そこに寄り添うように樽と澱のコクと香りがある。そして、それらの要素が一体となって1本のボトルに詰まっている。グラント・バージで何か1本と言われると、このワインを薦めたくなる。
 
フィルセル・シラーズ 2019
バロッサ・ヴァレーの中でも最良の畑の1つといわれる「フィルセル・ヴィンヤード」から生み出されるワイン。フィルセルは畑を開墾した家族の名前で、バロッサのリンドック・ヴァレー地方に位置し、深い沖積土壌の畑だ。
 
シラーズらしい深い色調。僅かにMLF発酵由来のようなニュアンスのあとに、コアとなるフルーツの香りが立ち上る。葡萄そのままのような香りに、プラムといった色濃いフルーツの印象がある。樽由来の香ばしさに、バニラやチョコレートのようなニュアンス、僅かに揮発酸様の香りも感じられる。香りは中心に焦点があるように纏まって感じられる。味わいは、ローヌを思わせるようなスパイシーさと、こなれてワインと一体化したタンニン、生肉のようなヒントも感じられる。濃さから想像しているよりもより豊かな酸味のおかげで、重々しくなく、ブドウ本来の鮮烈さを感じることが出来る。特に香りよりも味わいにスパイシーさやミーティーなニュアンスが良く表れており、そこに樽由来の甘香ばしい香りが追いかけてくる。こなれたタンニンと酸味により、質感がありながらもジューシーさも感じさせてくれる。
 
ひと昔前にローヌレンジャーというのが注目されたことがあった。フィルセルを飲んだ際にそのことが思い出された。香りの印象と違い、飲むと洗練されたシラーズの豊かな表情に樽由来の甘く香ばしい香りが寄り添う。香りからは、もう少し熟れた果実のニュアンスと果実自体の甘さを感じると予想していた。良い意味でこれが裏切られ、シラーズならではのダイナミックさの中に、凛としたローヌのようなニュアンスを感じる。そして、この凛とした佇まいが、ラム料理と非常に相性がいい。ソースが甘く濃厚であれば話は変わるが、ラムそのものをシンプルに味わうのに、フィルセルは最高の友となる。ラムの肉質とワインのテクスチャー、ジューシーさに程よく感じられるタンニン、そしてスパイス感。濃厚でありながら、重々しくなく、綺麗な酸味が演出してくれるジューシーさがラムの肉質に素晴らしくマッチする。是非、ラム肉を扱う料理に一度試して欲しい1本だ。
 
ミシャック シラーズ 2018
このワインは、現当主のグラント・バージの曽祖父にあたるミシャック・バージを称え名づけられた。ミシャック・バージはバージ家のワイン造りの伝統を築き始めた人物だ。バロッサでバージ家が培ってきたすべてがつぎ込まれた最高峰のクオリティーを誇るフラッグシップだ。
 
フィルセルよりも、より揮発酸のニュアンスを感じ、プラムやセージ、ブラックペッパー、コーヒーのニュアンスがはっきりと感じられる。面白いのが、上質なポイヤックを思わせる鉛筆の芯のような香りが感じられる。ブドウ由来の香りと醸造由来の香りがはっきりと感じ取れるが、それらがバラバラに香るのではなく、多層的に集中力をもっているように香る。口に含むと、奥深いが洗練されているという印象を受ける。豊かな果実味とともに、目が細かくよく溶け込んだタンニンが、ワインの液体の解像度を上げてくれている。点描のドットが非常に細かいおかげで、輪郭だけでなく、液体全体の存在を舌でしっかりと感じることができる。そして、全体の存在がわかると、そこに感じられる奥行きであったり、酸味であったり、濃さであったりのバランスも見えてくる。ミシャックでは、そうした要素の一体感が他のワインに比べて段違いにある。細かなタンニンと全体の一体感があることで、ヴェルヴェットのようなと表現される滑らかさを感じることが出来る。
 
フィルセルが出色の出来だったので、フラッグシップのミシャックにも期待がかかった。香り立ちや味わいの洗練さは最上級らしい完成度なのだが、ミシャックは食事と合わせたときに、その真価を感じた。先程、フィルセルはラムに合うことを伝えたが、ではミシャックはどうなのか。活き活きとした印象を受けたのはフィルセルだが、ミシャックと合わせるとより格調高い組み合わせになった。この格調高さによる恩恵をより感じたのがミスジと合わせた時である。ラム以外にミスジのステーキと合わせたのだが、このミスジにはミシャックの方が合った。ラム肉はそのたんぱくさが持ち味であり、肉質を際立たせるのにフィルセルのジューシーで凛とした味わいが良くマッチした。一方、ミスジはサシも細やかで脂身と柔らかさがあるお肉だ。この脂身を包み込むのに、ミシャックの溶け込んだタンニンが重要になる。ワインと一体となって質感を生み出しているタンニンや酸の要素がより格調高く洗練されているため、脂身を流すのではなく、脂身を包んでより高次元の味わいを生み出してくれる。これは使う側としても嬉しいと感じた。単価が高い牛肉を用いる際に、きちんとした理由付けで、フラッグシップのワインをおススメできる。脂身をどう捉えるかという判断にはなるが、ジューシーさで対応するよりは、コクのあるしなやかさで包み込んだ方が満足度は高くなると感じる。さすがはフラッグシップのワインだとうなずかせてくれる完成度だ。
 
今回の来日に際して試飲したのはミドルレンジ以上のワインであった。これほどどのワインも完成度が高いと、エントリークラスのワインの出来栄えも当然気になる。無理を言って、輸入元の都光にサンプルを用意頂いた。
 
ベンチマーク
名前の通り、指標とするのにも分かりやすいラインの「ベンチマーク」シリーズ。リージョンはバロッサではなく、南オーストラリアである。結論をいうと、グラント・バージの洗練された味わいを、よりカジュアルに楽しめるスタイルのシリーズでありながら、スッと体に馴染むような優しさとジューシーさがある。欲を言えば、ほんの気持ち度数が低ければ最高だったのだが、そうすると変な果実の甘さが出てしまい、折角のブドウ本来の良さを綺麗に表現するグラント・バージの良さが失われてしまうかもしれない。
 
このベンチマークシリーズをピザと一緒に楽しんだのだが、本当に気兼ねなく口に含むことが出来る。飲みやすさという表現よりも、自然体という表現が適しているように思える。そして、驚いたのが抜栓してからの持ちの良さだ。トーンにブレがないので、時間をおいても楽しむことが出来た。これは、バイザグラスで用いる際にも非常に心強いと思う。
 
足し算と引き算
冒頭にも書いたが、グラント・バージのワインには、和食に感じるような素材を活かす技術に加えて、フランス料理のような足し算の側面も感じられる。特に、フィフス・ジェネレーション、フィルセル、ミシャックと驚きの連続であった。その驚きは、自身のバロッサに対する理解の浅さを教えてくれるものであった。イーデンの影響はもちろんブレンドの時点で影響があることは想像できるが、バロッサの南部や標高の高い畑など、イーデンが含まれてなくとも、バロッサにはまだまだ知られていない側面がある。そのバロッサの良さを伝えてくれるのに、グラント・バージのワインは最適であり、それが出来るのは、脈々と現地で受け継がれてきたワイン造りに関する情熱と信頼だけでなく、アコレード傘下となり、未来に向けて常に刷新を続ける姿勢があるからだと感じた。自然派ワインも市場に多いオーストラリアだが、著名産地、大きな生産者だからこそできる完成度もある。この記事を読んで、興味がでた方は、是非一度輸入元に問い合わせをして欲しい。

輸入元:株式会社 都光
TEL 03-3833-3541

担当:小川

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