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【レポート】イタリア4都市に香るカンパリの可能性を感じたイベント『CAMPARI COCKTAIL NIGHT』

2023年03月29日(水)
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2023年3月15日(水)に、イタリアを代表するリキュールブランド「カンパリ」のブランドアンバサダー小川尚人氏によるゲストバーテンディングイベント『CAMPARI COCKTAIL NIGHT』がミクソロジーバー「Bar LIBRE」で開催された。本記事は、そのレポートである。

池袋「Bar LIBRE 」
池袋「Bar LIBRE 」

「Bar LIBRE」は清崎雄二郎氏がオーナーのお店で、ウィスキーが根強い池袋の地でカクテル文化を発信し続けている。清崎氏は、イタリアトリノで開催されたカクテルコンペティションの世界大会に出場した経験もあり、イタリアとも縁が深い。

世界大会を含む数々の大会で優勝した経験のある清崎氏は「カンパリ」のブランドアンバサダーを務める小川氏とイタリアの食文化である「アペリティーボ」を広めることで意気投合して、今回のゲストバーテンディングイベントが生まれた。

今回のイベントでは、小川氏が今年の2月にイタリアの主要都市を巡り、感じてきたものをカクテルとして表現し披露したものである。特に小川氏がブランドアンバサダーを務める「カンパリ」は「アペリティーボ」の代名詞ともいえるお酒だ。そのアペリティーボ文化を如何に感じるかが今回のイタリア巡りの主眼のようだ。
 
小川氏は、「北のミラノやトリノは気候の関係か保存食系(生ハム、チーズ等)が多く、ヴェネチアでは海鮮系、フィレンツェとローマはフライ等オイリーなものが好んで食べられていました。現地のトレンドとしては、ネグローニが圧倒的にトレンドで、カフェやレストランではカンパリスプリッツ又はアペロールスプリッツを飲まれている方が多かったです。」と現地の様子を語ってくれた。歴史や地域の風土を色濃く反映したイタリアならではの食文化の豊かさの中でカンパリの可能性を感じとり、それをイベントで披露してくれた。
 
今回披露されたカクテルは4種類。どれもイタリアの主要都市からインスピレーションを受けて創作されたものだ。一つ一つ紹介していきたい。
 

Milano (ミラノ)‐Milano Spectacle (ミラノ スペクタクル) 



カンパリの故郷であり、ファッショナブルな「ミラノ」をイメージした作品。奇しくも、小川氏が滞在した期間ではミラノ・ファッションウィークが開催されていたとのこと。そんな洗練されたミラノに降り立った空気感を表現している。
 
ベースはカンパリーノで用いられている既存のレシピを踏襲しているが、細部に様々な工夫や技術が見られる。例えば、クーベルチュールをカンパリの空瓶に纏わせ冷凍させた後に、カンパリを戻して2日間寝かせることでチョコレートの持つ良い部分だけど液体に移す工夫がされている。また、他の素材を加えた後にミルクウォッシュを行っている。
 
素材:Couverture chocolate wax washed Campari, Mix berry, Bulldog Gin, Frangelico, Citrus mix
 
氷の上には、ストロベリーのフリーズドライとホワイトチョコレートが飾られている。ウォッシュをしている分、味わいにクリアさが出ており、ミラノのファッショナブルな空気感を演出している。チョコレートの香りと明るくヴィヴィッドなイチゴの香りが心地よい。フェミニンさもありながら中盤にカンパリのほのかな苦味が出てきて、その苦味とチョコレートの余韻へとシームレスに繋がっている。クーベルチュールの抽出が強すぎたりするとこのバランスは崩れてしまうだろう。また、ウォッシュをしたことでうまい具合に情報量がコントロールされ、トーンの統一感が生まれている。何も知らずに飲んでも、イチゴとチョコレートの香りが豊かで、クリアでありながらミルクやチョコ由来のクリーミーなテクスチャーを楽しめる。氷が解けると時間で少しづつ表情を変えるのも面白い。
 
Venezia(ヴェネツィア)‐Riverside Fragolino (リバーサイド フラゴリーノ)



ヴェネチアの禁断の酒「フラゴリーノ」をカクテルアレンジしました。ヴェネチアの川辺の香り、アペリティーボの要素を含んだ一杯。
 
フラゴリーノは風味がイチゴの香りがするらしく、そこにヴェネチアでよく見られるイチジクの葉をスピリッツにインフュージョンしている点がユニークなカクテルだ。「ヴェネツィアはイチジクの樹が多く、街中でその香りがする。」と語る小川氏。そこに、今回の旅の目的でもあるアペリティーボの要素を組み合わせている。
 
素材:Strawberry infused Campari, Fig leaf infused Pear Vodka, Strawberry ice washed, Cinzano Sparkling
 
ストロベリーのアイスクリームでウォッシュし、味の伸びをつくっている。グラスの縁に飾られたパルミジャーノレッジャーノを齧りながら飲むと、甘めのスパークリングと塩気のあるパルミジャーノのコントラストが互いを引き立てあう。イチジクの葉の少しハーバルな香りと杏仁のような香りにイチゴの香りがふんわりと香る。フラゴリーノは市場では出回らないお酒で、イチジクの葉が「隠す」という意味が込められていることもあり、非常によく考えられている。パルミジャーノレッジャーノが添えられる事で、1杯でアペリティーボとしても楽しめる構成だ。
 
Firenze (フィレンツェ) ‐The Art of Ghost (アート オブ ゴースト)



アートとヒストリーの町「フィレンツェ」。メディチ家御用達だった香水をイメージした香り高い一杯。
 
フィレンツェで800年の歴史を誇る世界最古の薬局とも言われるサンタ・マリア・ノヴェッラで提供している香水をイメージしたカクテルだ。ジャスミンに加え、樹齢1000年を超えるエイシェントティーフラワーを使用。ネグローニがフィレンツェ発祥の為、ネグローニのスタイルで提供している。底に赤色のアルケルメスを用いている。アルケルメスは、元々ティラミス(の生地)に使用していたリキュールで、カンパリに似ており、最後に苦味と薬のようなニュアンスがでる。メディチ家に献上されていた香りを表現している。
 
素材:Clear Campari, Medici parfum liquid (Jasmin, Antient tree flower Gin), Spain mix
 
フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラに行かれた方は分かると思うが、とにかく色んな香りがする。香りの層が厚く、独特の空間と世界観がそこにはある。そんなサンタ・マリア・ノヴェッラで提供している香水をイメージしたカクテルには、ジャスミンがキーとなっている。ポプリ様の華やかな香りとボタニカルの香りに、複雑さのある苦味がいかにも薬局を想起させてくれる。この苦味には、カンパリだけでなく、ジャスミンも効いていると感じた。ジャスミンには、インドールといった苦味に寄与する複素環も成分として含まれている。ジャスミン茶を煮出した時の味わいといえば伝わるだろうか。カンパリの持つビターさとは異なる、ワインの世界でいうフェノリックさのようなニュアンスがあり、ストラクチャーと奥行きに寄与している。世界観が見事に表現されている1杯だ。
 
Roma (ローマ) ‐Nitro Campari (ニトロ カンパリ)



マルチカルチャーの要素を多く含んだローマのカクテル文化からインスパイアーされた一杯。フワフワなテクスチャーの中にトロピカルな味わいを含めているカンパリシェカラートの進化系カクテル。
 
素材: Campari, Passionfruit puree, Yuzu juice, Tonic water
 
カンパリシェカラートというシンプルにカンパリを用いたカクテルに、ゆずのジュース、パッションピューレを用いている。シェイクしたあとにハンドブレンダーで泡立てることで、シェイクだけでは出ないエアリーで柔らかいテクスチャーをだしている。ローマのマルチカルチャーを表現するのに、ゆずやパッションフルーツを用いている。同じ柑橘でも、国が異なるものを用いていながら、柑橘という一体感も出ている。ローマは今回の4都市の中でも一番南にあり、カクテルにもその明るさを感じた。ミラノの冷涼でクリアな雰囲気と、エアリーで柔らかさ(温暖さ)のあるローマの対比も面白い。
 


「カンパリ」のブランドアンバサダー小川尚人氏

以前、小川氏がザ・リッツ・カールトン東京にて行った『バーテンダー テイクオーバー 第二弾』の記事は反響が良かった。そのイベントでは、カンパリが主役のカクテルであったが、今回はカンパリが脇役のカクテルを披露してくれた。それはさながら、各都市を旅した際にふと感じる高揚感にも似ている。ふとした瞬間に、ドキッとしたり、感動したりワクワクしたりする。そうした躍動感に似たアクセントがふと香るカンパリの使い方がされていた。

ネグローニをはじめ、カンパリを用いたカクテルは世界的にもトレンドである。時には主役であり、時にはグッと下支えをしてくれる使い方以外に、例えばウォッシュで情報量を落としたり、テクスチャーが変わる素材や技法を用いることでカンパリの新たな面を見せてくれた。各都市がテーマのカクテルでもあったが、カンパリというお酒の可能性をちらりと見せてくれる小粋さがそこにはあった。

小川氏のカクテルはバランスもだが、ストーリー性や表現に多彩さがある。今回は清崎氏の「Bar LIBRE」で行われたが、また別の機会にでも、同一のテーマで小川氏と清崎氏両名のカクテルを楽しめるイベントがあると面白いと感じた。アンバサダーの役目は多岐に渡るが、芸能人といった認知やコミュニケーションを目的とした配役と違い、小川氏にはプロフェッショナルとしてのスキルがある。このタレントをいかに市場に落とし込んでいくのか。これが業界の課題でもあり、業界の可能性でもあると感じる。小川氏の益々の活躍に今後も期待したい。
 

CAMPARI ブランドアンバサダー 小川 尚人 氏
兵庫県神戸市生まれ。ニュージーランドやオーストラリアへの留学経験後、神戸の老舗店Bar elixir de longue vieでバーテンダーとしての修行を積む。様々なカクテルコンペティションでの受賞歴をはじめ、CAMPARI Cocktail Competition Asia 2018では日本チャンピオンとなり、日本代表としてミラノで開催されたアジア大会へ出場。その後Campari Groupの日本におけるオフィシャル・ブランドアンバサダーとして活動をスタート。カンパリをはじめとしたCampari Groupブランドのトレーニングやカクテル開発の傍ら、全国のバーでゲストバーテンティングもこなす。

Bar LIBRE オーナー 清崎 雄二郎 氏
熊本県出身 高校を卒業し日本ホテルスクールに入学するために東京に上京する。卒業後、2000年オープンの東京ドームホテルのメインバー【BAR2000】にて立ち上げに携わる。その後、お客様に誘いを受け神楽坂の【喜えん】にて店長として立ち上げから10年バーテンダーとして携わる。そこでシガーマネージャーの資格を取得。2008年に自身の会社【ヴィーノジャパン株式会社】を設立し、目白と目白台にてBARとレストランのコンサルを手掛け、ホテルスクールの講師も勤める。2011年に池袋【Bar LIBRE】を立ち上げる。国内外多数のゲストバーテンダーも務める。


担当:小川

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