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世界限定7本「グレングラント デボーション70年」発売

2023年11月06日(月)
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スコッチウイスキー「グレングラント」を取り扱うCT Spirits Japanは、エリザベス二世の卓越した治世に着想を得て世界限定7本作られた「グレングラント デボーション70年」を限定販売する。
 

【グレングラント デボーション70年】
「グレングラント デボーション70年」は、エリザベス二世の70年に渡る国家への奉仕と自然への献身的愛情(デボーション)に対するオマージュとして生み出された作品だ。世界限定7本で作られたデキャンタのうち1本は、2023年9月11日から22日までサザビーズによりオンラインオークションにかけられ、$101,300 /£81,250(日本円で約1,500万円)で落札された。
 
この記念すべき作品を生み出すにあたり、マスターディスティラーのデニス・マルコム氏だけでなく、数々の受賞歴がある職人のジョン・ガルヴィン氏やグラスストーム社のガラスマスターであるブロディ・ネアン氏といった才能が集められ、唯一無二の7点ものとして発表された。
 

1953年の原酒が詰められた7つのデキャンタには、女王に縁のある花が刻印されており、日本では女王戴冠式のブーケにも使われたステファノティスが描かれたNo.7が販売される。(東京の他に、ロンドン、ニューヨーク、香港、台北、シンガポールで販売される。※一般販売はされない)
 

【グレングラント】
スコットランドのウイスキーには、よく「GLEN(グレン)」という名が付けられている。ゲール語で谷を意味する語に、創業者であるグラント兄弟の家名が付いたのが「グレングラント」だ。このグラント兄弟は、スペイサイドのウイスキー造りにおいても重要な役割を果たした人物として知られている。
 
グレングラント蒸溜所は1840年にジェイムズ・グラントとジョン・グラントの兄弟によって設立された。設立された時期はスコットランドのウイスキー業界にとっても激動の時代であった。18世紀後半から19世紀前半にかけては、酒税をめぐる多くの法令が制定されてきたし、1827年は連続式蒸溜器の特許が取得されたりした時代だ。
 
技術や制度だけでなく、ヒュームとモスの「スコッチウイスキーの歴史」によれば、景気の後退や飢饉の拡大、雨の甥天候や禁酒会などの影響もあり、スコットランドで創業している蒸溜所数は1835年の230から1845年には170へと減少していた時代でもあった。
 
そんな時代の設立を経て、グラント家では様々な革新的な技術を活用してきた。ジェイムズ・グラントは、ロジーマス(Lossiemouth)港からエルギンまで列車を運行するモレイシャー・レイルウェイ・カンパニー(Morayshire Railway Company)の創設者でもあり、この地域での他の蒸溜所建設に大きな影響を与えた。また、1883年にウイスキー蒸溜所の中で最も早く電気を導入したことからも、技術に対する先見性が伺える。
 
1861年にジョン・グラントが、続く1872年にジェイムズ・グラントが亡くなったことにより、ジェイムズの息子であるジェイムズ(父と同名、通名「ザ・メジャー」)が継承してから、更に大きく発展し、現在まで続くスタイルが確立されていく。中でも特徴的なのが精溜器(purifier)だ。
 
【違いを感じるスタイル】
各蒸溜所の蒸溜器の形はよく話題にされるが、精溜器については話されることは少ない。現代のように技術によって細かく管理できる時代ではない頃に、精溜器はその名の通り、望むピュアなスタイルを実現するのに必要不可欠なものであっただろう。
 
蒸溜は温度によって揮発する化合物が異なる。還流をデザインし、カットを調整することによってニューメイクのスタイルをコントロールできる。石炭の時代、蒸留速度や冷却技術は今のように発達しておらずコントロールが難しかっただろう。ネックを抜けて届いた蒸気を更に「選別」することで、よりライトで香り高いスピリッツを生みだそうという意図が読み取れる。ひょっとすると、連続式蒸溜が本格的に稼働を始める時代、ポットスチルの香り高さを残しつつ、連続式のような軽さを求めたのかも知れない。
 
発酵で生み出されるコンジナーの中でもフルーティーな香りに寄与するエステルは、カルボニル基の極性はあるものの、エタノールと言ったアルコールよりは水素結合などの分子間力が穏やかなため蒸発しやすい。グレングラント特有のりんごを想わせる香りは、樽だけでなくこうした蒸溜器の特性によるところもあるだろう。
 
【デリケートながら多彩で奥深い味わい】
現在、グレングラントは、「グレングラント アルボラリス」「グレングラント 10年」「グレングラント 12年」「グレングラント 15年」「グレングラント 18年」「グレングラント 21年」の6種類を通常展開している。

今回の「グレングラント デボーション70年」の発表に際し、年数表記をした12年、15年、18年、21年の試飲機会を頂いた。上記で触れたようなフルーティーさ、軽やかさを味わいたい際には「グレングラント アルボラリス」「グレングラント 10年」「グレングラント 12年」がおススメだ。
 

グレングラント アルボラリス
グレングラント アルボラリス
グレングラント 10年
グレングラント 10年
グレングラント 12年
グレングラント 12年

特に12年は果汁の多い果実を思わせるジューシーさやスイレンを想起させるような華やかさ、ほのかに感じるグラッシー感やシリアル感が多層的に香る。明るくジューシーな味わいでありながら、アフターにはトフィーやピリッとしたスパイスのニュアンスがある。
 

グレングラント 15年
グレングラント 15年

「グレングラント 15年」は少し他とは異なり、度数は50度と高めだが、それを全く感じさせないバランスと滑らかさがあるプロ向けの1本だ。ノンチルフィルタードであり、香りのインテンシティーも格段に高い。
 

甘さ、フローラル感、フルーティーさのバランスがよく、熟れた果実のニュアンスにほんのりとスパイス感、樽感が香り、中盤には少しソーピーなニュアンスも感じられる。まろやかさとともにナッティーなニュアンスがコクを感じさせてくれ、アフターには綺麗なモルト感とハチミツやアップルパイのニュアンスがある。
 
18年以降になると、グッと表情が変わってくる。今までの明るさから円熟による奥深さが表に出てくる。若い印象よりもアーシーさや自然を感じさせてくれるような香りがあり、りんごのニュアンスも、火入れしたものやドライフルーツのように濃さと甘さが引き立ってくる。21年はシェリー樽の割合が増えていることもあり、甘さや凝縮感、僅かに感じるタンニンによる引き締めなど総合的なバランスと奥行きが何段階も高くなる。
 

グレングラント 18年
グレングラント 18年
グレングラント 21年
グレングラント 21年

【伝統と歴史の担い手】

こうした歴史が反映された味わいには、マスターディスティラーであるデニス・マルコム氏の尽力も大きい。マルコム氏は60年を超えるキャリアを持ち、2016年には、スペイサイドのビジネスと地域社会への貢献が認められ、英国女王陛下より「名誉大英勲章OBE」が授与されている。
 

グレングラントの歴史を振り返ると、経営が何度か変わっただけでなく、直火での蒸溜からの転換やピートの使用を止めたりと、製造においても変わった点がある。しかし、「ザ・メジャー」が目指した軽やかさとフルーティーさ、そしてとても柔らかい質感のあるスタイルは変わっていない。グレングラントはスペイサイド地区で、製造からボトリングまでの工程をエステート内で行う唯一の蒸溜所らしく、そうした姿勢が味わいにも反映されているように感じられる。
 
ウイスキーは環境が重要だと言われるが、グレングラントでは、環境だけでなく伝統を受け継ぎながら人がつくりだすということをより鮮明に教えてくれる。2006年にカンパリグループが所有するようになってからイメージも刷新され、よりスタイルに磨きがかかったようにも感じられる。2021年の60年に続く「グレングラント デボーション70年」の発売もあり、今後も注目していきたい蒸溜所だ。
 
 
【参考文献】
Russell, I., Stewart, G. and Kellershohn, J. ed (2021), Whisky and Other Spirits: Technology, Production and Marketing, Academic Press
Miller, G. H., Whisky Science: A Condensed Distillation, 2000, Springer
Moss, M. S. & Hume, J. R, The making of Scotch Whisky: A History of Scotch Whisky Distilling Industry, 2000, Canongate Books(坂本恭輝 訳(2004)『スコッチウイスキーの歴史』国書刊行会)
Edinburgh Whisky Academy, The History of Whisky and Distillation, 2019
 
担当:小川

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