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缶ワインのイメージを払拭:Djuce Co-founderのアレックス・バウマン氏インタビュー

2023年12月09日(土)
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この5年ほどの間で、日本でも缶ワインを小売市場でも見かける機会が多くなった。輸送時の二酸化炭素排出量といった課題だけでなく、消費者行動や生活様式の変化も伴い需要が見込まれ、各社取組みを行っている。
 

北米をはじめとして、缶ワインの需要が大きく伸びている中、先日小社代表の太田が試飲をして驚いたブランドがある。スウェーデン発ワインブランド「Djuce」だ。

ワインの伝統を尊重しつつ、時代に合ったスタイルの提供を行う同社のCo-founderであるAlex Baumann(アレックス・バウマン)氏の来日に際し、お話を伺った。
 

▶正直、缶ワインと期待せずに飲んだのですがその品質に驚きました。SDGsやアート性、フレッシュさと品質を鑑みてもホテルのミニバーにもピッタリだと思いました。
 
私も正直に申しますと、Djuceのチームと一緒に仕事をする時に同じリアクションをしました。ホテルの導入もご指摘の通りで、カリフォルニアではChateau Marmontへ卸しているインポーターと良い関係があり、Chateau Marmontの知名度も高く西海岸を中心にホテルでの採用が始まりました。
 
採用の実績を基に、ロンドンのNoMadとの特別なワインを一緒につくることもできました。これがとても好評で、様々なメディアにも取り上げられ、更に他のホテルへの採用が決まっていきました。5つ星をはじめとして、ゲストがより良いワインを求めているホテルへの採用が進んでおり、現在The Hoxtonとグローバルキャンペーンの話があります。容量サイズも丁度いい250ml、グラスに約2杯分ですのでミニバーにも適していると思います。
 
 
▶Djuceを始める経緯をお伺い出来ますでしょうか?
 

私を含め、創業には5つの創業者が関わっており、内3人はブランド関連の代理店の方です。彼らは、持続可能性とファッションという視点で既に仕事をしていました。自然派ワインへの情熱があり、ワイン業界でも持続可能でありながらモダンでフレッシュなものをつくれないかというのが始まりです。
その時に注目していたのが缶でした。ワイン業界についてのノウハウは彼らにはなかったので、4人目としてソムリエであり、スウェーデンで10年に渡り輸入業をしているPontus Lindqvist氏に参画してもらうことにしました。その後販売面を考えた際に、消費者ブランドでの経験がある私に声が掛かりました。

Pontus Lindqvist氏のネットワークを用いて生産者に当たって行きました。私たちの缶ワインには生産者の名前が記されるため、中には懐疑的に思われる方もいましたが、オーストリアのMeinklangが一緒にやってみようと乗ってくれることになりました。まずは少量で試してみることにしました。持続可能性という点で自然派ワインをつくっている彼らも缶ワインという新しいフォーマットには可能性を感じており、続けることになりました。昨年、スウェーデンでは250ml缶を12種類発売しました。
 

 
小売で成功したいのであれば、12種類も一気に発売するのはおススメ出来ないのですが、缶ワインで何ができるのか、品質の良い缶ワインが可能なのかということを示す必要がありました。幅広い品種や種類を示すことで、例えばジャンシス・ロビンソンといった著名なワインライターにも取り上げられたりしまし、受賞をすることもしました。(筆者注:ジャンシス・ロビンソンは、Cans continuedという記事の中でDjuceに触れている)
 
こうした成功もあり、「偉大なワインの容器フォーマットが異なる提供」という点で、私たちは缶ワインにおいて何ができるかを示すことができました。私たちは一貫して、持続可能であり、モダンでクールさがありながらフレッシュなものをつくりたいと思って来ましたので、それが形になり評価されたことは嬉しく思います。業界にとっても新しい刺激となり、活性化が進めばよいと感じています。
 
 
▶缶の技術はどのようにしているのでしょうか?
 
缶に関しては、Ardagh Metal Packagingという会社にお願いをしています。内側のコーティングも環境配慮されたもので、中のワインをフレッシュに保ってくれます。ワインは清涼飲料水やクラフトビールとは異なり酸があるため専用のものを使用しています。
 

技術自体はあったものですが、より品質の良いワインを缶で提供するという点ではDjuceが初めてではないでしょうか。自然派ワインを取り扱っていますので、二酸化硫黄の添加も少ないか無いものばかりであり、缶ワインが適している面もあります。

スウェーデンの会社ですが、缶に詰めるといったオペレーションは全てバルセロナで行っております。なぜバルセロナかというと、缶といった違ったフォーマットでの充填に特化した企業があるからです。
 

ワイナリーに直接携帯式の缶充填機を送ることもできます。バルセロナにバルクワインを送る必要がなく、直接ワイナリーで充填して、イギリスなどの市場に送る場合に使用することもあります。ペットナットの場合も現地で充填します。
 

缶のメリットは軽さや保存性という点だけでなく、消費者にとっても少量で試せる機会を提供できます。私たちはオレンジワインを幾つか販売していますが、オレンジワインに興味があるけど、ボトル1本購入して試すのには大きなチャレンジが伴います。価格も決して安くはありません。そうした時に缶ワインであれば、より手軽な価格で試すことができます。
日本では高品質な缶ワインという強豪が少なく伸びしろがあると感じています。現在16か国の市場で販売をしていますが、生産者とのネットワークも強く、また生産量も変更ができます。缶の軽さというメリットを活かして、航空会社にもアプローチをしています。

▶日本でもRTDをはじめ缶の酒類は多くありますが、そうした酒類と並べて販売をされると価格がどうしても高く感じてしまします。この辺りはいかがでしょうか?
 
とてもよく聞かれる質問でもあります。まず、私たちのワインは「中身のワインが高品質である」という点が他とはことなります。また、自然派のワインであるという点も挙げられます。しかし販売対面では、各国によって輸入に係る金額や酒税も異なりますので、コスト構造の見直しというものを発売してからも行ってきましたし、各市場におけるRRP(メーカー希望小売価格)を適切に設定するようにしています。
 

現在はラベルをプリントして、缶に貼っていますが、今後は更に環境負荷を減らすために缶に直接プリントする予定です。需要が高まればコストもダウン出来ます。高品質缶ワインという市場においては、私たちが先駆者でもあり、価格帯を設定することも必要になります。私たちは250mlのよりプレミアムなものと、187mlの手頃なラインの2種類を用意しており、消費者に価格の面でも選択の幅を提供しています。
 

▶ラベルも特徴的ですが、どのような意図があるのですか。

Djuceの成り立ちのところでも少し触れましたが、持続可能なものだけでなく、モダンでクールなものをつくりたいという思いがありました。そこで「世界で一番大きなアルミ缶に書かれたギャラリー」にしたいねという話になりました。それぞれの缶に違ったアーティストを採用しています。残念ながらまだ日本のアーティストのものはありませんが、世界中のアーティストの作品を用いて個性的なラベルにしています。
 

【缶イメージの払拭】
Djuceが革新的なのは、缶というフォーマットで、世界中の高品質な生産者のワインを提供しているところにある。例えば、日本でも馴染みのあるブルゴーニュのVergetのシャルドネもある。程よく樽の効いたリッチさとフレッシュさが手頃に楽しむことができる。
 
Alex Baumann氏との話の中でも挙がったが、「え?缶でしょ」という缶容器と品質というものへのパーセプションをどのようにして変えていけるかが鍵となる。世界的にも高品質なものを選ぶ傾向が出てきている中、手軽さと高品質さをどのように訴求していけるかが問題となる。
 
脱炭素社会への貢献として、自社だけでなく流通段階で生じる二酸化炭素量も考慮する必要性が生じている。ラベルが湿気てよれているミニボトルよりも、POPで印象的な缶ワインの方がミニバーには適しているかも知れない。是非一度、騙されたと思って手に取ってみて欲しい。缶という外側ではなく、ワインそのものの質の高さに驚くだろう。
 
 
【参考文献】
Helena A. Williams et. al, Texas Wine Marketing Research Institute, Growth of the Wine-In-A-Can Market, Texas Tech University
Scrimgeour, N., Hirlam, K., Hsieh, D., Wilkes, E., Krstic, M. 2023. Canned wine: Looking for a silver lining. Wine Vitic. J. 38(1): 28-34
Versari A, Ricci A, Moreno CP and Parpinello GP. 2023. Packaging of wine in aluminum cans – A review. Am J Enol Vitic 74:0740022.
 
担当:小川

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