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ブランドとオペレーション 深山敏郎氏

ブランドとオペレーション 第2回 福井国際観光ホテル リバージュアケボノのブランドストーリー

2024年05月13日(月)
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2000年代に週刊ホテルレストランで編集委員を務めた、株式会社ミヤマコンサルティンググループ 代表取締役の深山敏郎氏。深山氏は中小企業診断士でありながら、国内ホテルや自動車メーカーなどの人材育成コンサルティングにも携わる。現在はTSA(東京声優・国際アカデミー)国際コミュニケーション学科常勤講師(異文化)など、複数の専門学校や大学でも非常勤講師を務めている。

深山氏は実績や未来ある若者を通して感じている、
1:ホテル・レストランの危機管理の現状と課題、対処法(例)
2:ホテル・レストランのオペレーション・スタンダードの必要性と具体策(例)
3:ホテル・レストランの人材定着の鍵(スタッフ、チーム、組織の「レジリエンス」を高める)
を踏まえて、ホテル業界関係者との対話をもとに、ホテル業界発展のために連載をお届けする。

※4月からは月1回連載予定
 

3つの糸が織りなすストーリー

「福井らしさを感じるホテル」
「旅館の良さのあるホテル」
「素敵な朝を迎えられるホテル」


同ホテルではこの3つのブランドキーフレーズを重視している。自社の強みを絞り込んだ結果だ。
 

福井らしさを感じるホテル

福井の観光資源は「東尋坊」、「永平寺」、「恐竜」だけではない。全国チェーンのホテルに対する差異を明確にするため、地元福井の観光資源である「景観」、「歴史」、「食」を大切にする姿勢を貫き通している。ここではその一端をご紹介しよう。

景観
同ホテルからは、美しく蛇行する足羽川(あすわがわ)を一望できる。桜の季節には福井ゆかりの戦国・安土桃山時代の美女「お市の方」にちなんで社長が「お市桜」と名付けた美しい桜並木がゲストの目を楽しませる。
 
館内のいたるところに”桜”をモチーフにしたインテリアがある。例えば、足羽川の川面に浮かぶ桜の花びら、その重なりをイメージした4枚重ねの装飾スクリーン、店名でもあるAujus(オージュと発音する)日本語では「桜樹」のイメージとなっている。(写真参照)景観とインテリアが一体化している。

 


歴史
最上階に景観を楽しめる天空大浴場「曙覧(あけみ)」がある。「曙(朝日の意の屋号)から福井を一覧する」という意味で、福井が生んだ幕末の歌人・橘曙覧(たちばなあけみ)の名前に由来する。
 
福井県立恐竜博物館は大きなリニューアルを果たしており、ファミリー客や観光客が多く見受けられる。化石研究体験など、化石発掘の疑似体験ができる人気のスポットである。
 
また、「特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡」は戦国大名越前朝倉氏にゆかりの遺跡であり、今後の福井にとって重要な観光資源となろう。
 



「お幸ざい」
「お幸ざい」という福井の食材にこだわった朝食メニュー、ある意味で、”サブ・ブランド”は、朝食の華やかなメニューに対してつけられた。
 
2024年3月、北陸新幹線が福井県敦賀市まで延伸を記念して福井県が行った「新幹線開業アイデアコンテスト」で最優秀賞を獲得した「お幸ざい」は、幸福度ナンバーワンの福井県にちなんだ地元料理のブランディングである。
 
社長によると考案のきっかけはコロナ禍であり、大皿から小鉢に変更したとのこと。オペレーションの手間はかかるが、ゲスト満足は向上につながった。
 

超一流のフレンチシェフ
「食」をめぐる特徴は、「お幸ざい」だけではない、本館2FのFukui French Aujus(桜樹)では、フランスのミシュラン店で研鑽を積み、全国フランス料理コンクール「ジャンシリンジャー杯」準優勝。デザート系ではコンクールで最高点をとった、シェフ 松塚 高澄(たかずみ)氏がいる。
同レストランは地元ゲストの記念日、会合利用などでリピート率も高く、宿泊ゲスト3割、地元ゲスト7割が現状という。地元とのつながりを重視していることがこの比率にも出ている。
 

 

旅館の良さのあるホテル

また、旅館の良さのあるホテルという意味では、もともと文学青年であった先代社長の名づけた旅館時代の「あけぼの」の名称を「アケボノ」として継承した。これは枕草子の「春はあけぼの~~」から引用したという。また当時、各客室の名称を源氏物語の登場人物にしたという。かなりの発想力である。
 

素敵な朝を迎えられるホテル

 社長によると、チェックインから始まってすべてのゲスト・イクスピアリアンス(ゲストの体験)が「素敵な朝を迎えられる」ためにあるという。客室・レストラン・大浴場からアメニティなど細かな工夫に至るまでのストーリーを重視している。いわゆる「バリュー・チェーン」がうまく設計されている。

 客室は和室と洋室に分かれており、洋室にもいろいろなタイプがある。洋室は基本的にSerta社片面ピローソフトマットを利用している。筆者も快適な就寝が得られた。
 
次回は同ホテルの「今後のブランドコンセプトとオペレーションの課題」についてご説明する。


 

この記事を執筆するにあたって、ホテル リバージュ アケボノ 代表委取締役 清水嗣能氏ならびに 同社 常務取締役 清水久能氏へのインタビュー、同社Web、現地訪問(ホテル及び周辺の代表的観光資源)を参考にした。
 

ホテル概要
福井国際観光ホテル リバージュアケボノ 

客室数   140室(300名)
チェックイン / チェックアウト 15:00 / 11:00
館内施設 天空大浴場、小浴場、宴会場 (陽光・花宴)、Fukui French Aujus
駐車場   バス5台、乗用車60台収容可能

〒910-0006 福井県福井市中央3-10-12
Tel.0776-22-1000 Fax.0776-22-8023
Web:https://www.riverge.com

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