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特別インタビュー ザ・ペニンシュラ東京

〈特別インタビュー〉給与アップだけでなく、会社が働く人を大切に思いやるスタンスが求められる

2024年04月04日(木)
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 ザ・ペニンシュラ東京は「フォーブス・トラベルガイド2024」のホテル部門とスパ部門において、最高ランクの5つ星評価を獲得。これによりホテル部門は9年連続、スパ部門は10年連続での最高評価獲得という栄誉を手にした。
「最高のプロダクトとサービスのご提供」に重きを置き、家族のような温かみを感じるおもてなし「ペニンシュラ・ホスピタリティ」を体現し続けるため、スタッフの幸せと働きがいを第一に考えた環境づくりとより良い人材の確保に注力しているザ・ペニンシュラ東京。
 その取り組みの一環として、2024年1月から全体的なベースアップを実施し、4月には新卒基本給を月額30万2100円(時間外手当、通勤手当別途)に引き上げた。新卒基本給の30万円台への引き上げはホテル業界初のチャレンジだ。ザ・ペニンシュラ東京 執行役員ピープル&カルチャーディレクターの本間 聡氏に、ペニンシュラが考える働く人との向き合い方を聞いた。

 


ザ・ペニンシュラ東京
執行役員 ピープル&カルチャーディレクター
本間 聡氏


profile 日本での15年以上におよぶラグジュアリーホテル業界でのキャリアを持ち、コンラッド東京などで人材開発に係わる主要部門を歴任し、2008年にザ・ペニンシュラ東京人材開発部次長として着任する。2012年人材開発部部長に昇格。現在に至る。


接客業のトップクラスと評される人たちの給与がどうして低いままでいいのだろうか

■ザ・ペニンシュラ東京は、新卒基本給30万円台という注目すべき給与アップを実施しましたが、その考え方を教えてください。
 
 代々家族経営で、「人を大切にする」という文化が長きにわたり受け継がれるホテルグループとして、ザ・ペニンシュラ東京は、コロナ禍以前から給与アップを実現したいと考えていました。その流れの中で、そもそもなぜホテル業界は給与が低いのが当たり前という常識が根付いているのかという疑問を抱きました。語学も堪能で、サービスの知識やスキルも高く、接客業の中でトップクラスと評されている人たちの給与がどうして低いままでいいのだろうかと単純に思ったのです。そこで、誰も給与の課題に触れることができない状況を、触れられる状況に変える必要があると考えたのです。
 そこに触れるためには、もちろん相応の売り上げが求められます。東京は世界の主要都市と比べると給与水準だけでなく、ADRも追いついていないのが現状です。世界基準に追いつき、全体的な水準を引き上げるためにも、コロナ禍が明けてホテル市場全体の価格が上昇しているこのタイミングで給与の課題に触れる好機だと考えたのです。
 
■30万円台という金額はどのように決まったのでしょうか。
 
 政府が初任給のアップを求める中、他業界の企業を見ると初任給は23万円から25万円が概ね基準になっていると思います。某アパレル企業が初任給30万円を打ち出してトップニュースになっても、ほとんどの企業がそのレベルに追い付くことができずに、再び議論が沈静化してしまった印象です。そこでザ・ペニンシュラ東京では、おこがましいかもしれませんが、業界内外にインパクトを与え、給与の課題の一翼を担う思いで、初任給を上げるならば30万円を超えなければならないと考えました。
 そこで、新たな給与体系は、売り上げや利益率のバランスを探りながら、基本給のベースアップに加え、賞与の一部を月ごとに分配することで、賞与の一定額の支払いを保証。さらに、年に1回業績に応じた賞与を支払うという仕組みにしました。その結果として、新卒基本給30万2100円を実現したのです。また、新卒基本給の引き上げと同時に、既存スタッフのベースアップも実施しました。

 

コミュニティーの中で可能性を見出し人を大切にするカルチャーが生まれた

■ザ・ペニンシュラホテルズはグローバルな展開の中で、どのように給与を決めているのでしょうか。
 
 ザ・ペニンシュラホテルズはホテルが建つ各都市の業界の給与調査を毎年実施し、自社含めた各社の給与レベルをいくつかのグループに分けています。給与の低いグループ、平均的なグループ、少し上のグループ、そして一番上のグループであるトップティアがあるのですが、ザ・ペニンシュラ東京は基本的にそのトップティアの中でも高い水準に設定しています。
 また、調査はグループ単位の平均値ではなく、一人ひとりの給与が業界のトップティアに入る給与設定をしています。今回のように、ザ・ペニンシュラ東京が独自の取り組みとして給与を上げたケースは別としても、これまでも毎年調査を重ねて給与水準を維持してきました。
 給与引き上げ後の反響に関しては実施してから間もない段階なので、データが少なく、直接的に起因しているかは明確にわかりませんが、2024年1月、2月の中途採用の応募数は前年比50%増、リテンションにおいても1月、2月の退職者の数は例年に比べてかなり低くなっています。
 
■今回の人への取り組みも含めた、ザ・ペニンシュラホテルズのカルチャーについて教えてください。
 
 ザ・ペニンシュラホテルズは、ただビジネスを拡大させるためにホテルを展開するのではなく、目が行き届く範囲内で経営したいという思いから、観光と経済の中心となる都市をベースに、現在世界12軒のみで展開しています。その都市にビジネスの可能性があるから人が集まる。人が集まったら泊まる場所が必要だ。ゆえにペニンシュラがその場所を創り、コミュニティーに貢献していこうという考え方が常にベースにあるのです。
 また、人の面で言えば、ザ・ペニンシュラホテルズは、カドゥーリー家によるワンオーナーの家族経営で、”ペニンシュラ・ファミリー”と呼ばれる独自のカルチャーがあります。共に働くスタッフを家族のように思い、切磋琢磨し合い、成長を喜び合うと共に、「“人=スタッフ”がホテルの歴史をつくる」と信じ、スタッフ一人ひとりを大切にしています。その証しとして、例えば香港では、三世代で働くスタッフがいたり、60年以上勤めているスタッフがいるのです。また、今回のコロナ禍であったり、過去にはSARSといったホテルの経営的に厳しい時期においても、できる限り雇用を守る努力をしてきました。そこにも、ペニンシュラのカルチャーが表れています。

 

スタンダードを設けず自分のおもてなしの気持ちをゲストに合わせて提供するスタイルを追求

■ザ・ペニンシュラホテルズのサービスカルチャーについてもお教えいただけますでしょうか。
 
 私たちはお越しいただいたすべてのお客さまに常にベストなサービスを、それぞれのお客さまに合わせた形で提供したいと考えています。コロナ禍においては、これまでご提供してきた“ペニンシュラ・ホスピタリティ”に再度立ち返り、個々のスタッフがそれぞれのお客様に合ったサービスを考え、行動することをモットーとした「ペニンシュラ・サービス・プリンシプル」をまとめました。これまでご提供してきたサービスにおいて大切にしていること、ザ・ペニンシュラ東京の体験を通じてお客さまが期待していること、何を思って帰ってきてくださるのか、さまざまな側面から分析した結果を整理したものです。
プリンシプルの中で「スタンダードをやめよう」という意志をもう一度伝え、それぞれのスタッフが「このお客さまには、このサービスが必要だ」と思うことを自分自身で判断して、実行していく方法を追求しようとしています。それはスタッフ個人にとってはとても勇気のいることかもしれません。だからこそ、みんなが自信を持って追求できるように、会社が「思い切りやってもいいんだよ」という後押しをする環境づくりに努めています。
 ですから、ザ・ペニンシュラホテルズにはロイヤリティープログラムというものはありません。お客さまがペニンシュラに戻って来てくださる理由はロイヤリティープログラムステータスやポイントではなく、私たちにまた会いたいと思っていただけているからだと信じています。
 給与が上がることは喜ばしく、私たちとしても素晴らしい人材への対価として今回の引き上げに繋げられたことを嬉しく思います。それと同時に、やりがいのある職場環境を整え、これからも従来通り会社はスタッフに寄り添い、思いやりをもちながら進んでいくというスタンスを続けていきます。

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