今や代官山のオシャレスポットとしても人気の高い「スプリングバレーブルワリー東京」。コアなクラフトビールファンはもとより、これまでビール派ではなかった女性や若者層にも、同店の誕生が新たなビール市場を切り開いた
“スプリングバレーブルワリー(以下、SVB)”が創業10周年を迎えた。SVBは、1870年に横浜で設立された日本のビール産業の礎を築いた醸造所の精神を、キリンビールが受け継ぎ、展開しているブランドだ。同ブランドは代官山と京都で展開する直営店、飲食店向け小型ディスペンサー‟Tap Marché“、会員制生ビールサービス‟キリン ホームタップ”、流通用の缶商品などさまざまな提供形態で展開され、クラフトビールファンの人気を博している。
そんな中、本年はアニバーサリーイヤーを記念して、年初より‟創業10周年“イベントを直営店で定期的に開催している。同イベントは、新たな市場へのアプローチにとどまらず、これまでの10年間、SVBの成長を共に支えてきたファンへの感謝を伝える場としても企画されている。具体事例をいくつか紹介すると、年初には、東京と京都の両店舗で、創業初期のコアシリーズビール6種のうちの1つである‟on the cloud”を限定販売した。筆者も飲んだことがあるが、‟SVBといえば!“と多くのお客さまに記憶されている銘柄だ。さらに両店で特に再販のリクエストが高いフードメニューも期間限定で復活した。
また、2月には、創業メンバーをゲストスピーカーに迎えたトークセッションに加え、来場者がブリュワーと交流しながらこれまでを振り返る‟SVB 創業10周年!KICK-OFF PARTY“も開催された。さらに4月には、企業の枠を超え、全国のクラフトビール事業者10社と共に東京店で、‟Brewer’s IPA Night“を開催した。今回、創業10周年を迎えるにあたり、スプリングバレーブルワリー㈱代表取締役社長・井本亜香氏にインタビューを行った。井本氏は、本イベントに込めた思いについて伺ったところ、
「この十数年で日本国内のクラフトビールブルワリーは増加傾向にあり、近年では毎年100を超えるペースで新たなブルワリーが誕生しています。さらに各地でイベントも増加し、市場全体としての勢いも継続しています。一方で、ビール業界全体におけるシェアという観点では、依然として大手5社の存在感が大きく、クラフトビール単体での市場拡大が想像より進んでいない現状だと見ています。こうした背景から、自社単独での成長を目指すのではなく、‟クラフトビール業界“という‟より大きな枠組み”の中での連携や協業を重視していくことが大切だと考えるようになりました。また、弊社がキリンビールのグループ会社であるという特性から、大手市場とクラフト市場の橋渡し的な役割も担えるのではないかとも考えています。
その中で弊社はこの10年間、全国の醸造所やブリュワー、生産者の方々との交流を重ねながら、クラフトビール文化を共に育んできた。その中で大切に培ってきた人間関係の信頼から、この4月に開催した‟Brewer’s IPA Night“は実装できたと自負しています。その際、京都醸造様、DevilCraft Brewery様、ふたこビール醸造所様の3社と共に10周年を祝えたことも嬉しかったですし、業界の先駆けブルワリーから新進気鋭のブルワリーまで、IPAという共通のテーマのもとに多彩な造り手が集結したことでSVBファンのみならず、クラフトビールファン、IPAファンの多くの方がたにもご満足いただけたことも嬉しかったですね」
と返ってきた。
スプリングバレーブルワリー㈱代表取締役社長の井本亜香氏。ともすると、クラフトビールにおいては後進国と評されることもある日本だが、その美味しさは決して世界に引けを取るものではないと語る。井本氏は、こうした日本のクラフトビールの魅力を、より広く世界に発信していきたいと語る。ちなみに、井本氏の好みはペールエールだそうだ
次に「SVB東京、SVB京都」といった、醸造所を併設したレストランをクラフトビールメーカーが持つことについての見解を伺った。
「まず何よりも、お客さまとダイレクトにコミュニケーションを取ることができる点が大きいです。特に、ブリュワーたちがさまざまな感想を迅速にキャッチできる環境が整っていることは、毎月のように新たなチャレンジを重ねている彼らにとって、発想の源泉であり、既存商品のブラッシュアップのヒントにもなっています。さらに、新商品を発売した際には、お客さまにアンケートしていただき、直接フィードバックをいただく機会も設けていまして、そのようなプロセスを通じて、お客さまには参画意識を高めていただけますし、より魅力的な商品づくりにつなげられています。この店舗限定醸造品を楽しみにしてくださっているお客さまが多くて、その時期に毎月、いらっしゃるコアなリピーターの方もいらっしゃいます。
もう一点は、今回の10周年企画でも“SVB人気メニュー復活総選挙”を開催したように、ビールと料理のペアリングの可能性をさまざまな形で体験していただける点です。この6月には、過去最も人気の高かったイベント“寿司×クラフトビール フェス in SVB東京”を久々に復活させました。お客さまご自身で自由にビールとお寿司を組み合わせて楽しんでいただくスタイルに加えて、今回は3社のブルワリーとのコラボビールの開発など、より幅広い体験を盛り込んだ内容にブラッシュアップしました。さらに、東京店ではグルメ廻転寿司『まぐろ問屋 三浦三崎港』などを展開する㈱ネオ・エモーション様と共創し、生本マグロの解体ショーや和楽器のライブパフォーマンスなど、夏祭り気分を楽しめる演出もご用意しました。一方、京都店では1夜限りの“寿司×クラフトビール ナイト in SVB京都”を開催。スタッフが懇意にしているご近所の名店『寿し小松』様とのコラボによるスペシャルディナーで、当日は大将の津田倫秀氏による完全オリジナルの寿司をご提供しました。おかげさまで満員御礼で開催させていただき、一期一会の体験をお楽しみいただけた一夜となったのではないかと感じております。
このように、直営でレストランを運営しているからこそ実現できる自由な発想とスピーディな企画展開が、SVBならではの強みとなっています。今後も、お客さまとのリアルな接点を大切にしながら、クラフトビールの新たな魅力を提案し続けていきたいと考えています」。
SVB10周年企画は今後も年末まで予定されており、6月23日(月)から展開する‟ENJOY! CRAFT 夏祭り 2025“ではフェア専用にSVB流屋台飯が登場。他にも、夏祭り版のビアフライトや夏限定‟SPRING VALLEY BREWERY 青のラガー”の発売など、夏にぴったりのクラフトビール体験ができる。
アニバーサリーイヤーを駆け抜けるべく、すでに秋企画、冬企画も動き始めている。ぜひ、この機会に「SVB東京」及び「SVB京都」に足を運び、ビールと料理の多彩なペアリングの楽しさ、そして店舗ならではのライブ感を体感してみてもらいたい。
「スプリングバレーブルワリー」
https://www.springvalleybrewery.jp/
「スプリングバレーブルワリー東京」
https://www.springvalleybrewery.jp/pub/tokyo/1st_floor/
「スプリングバレーブルワリー京都」
https://www.instagram.com/springvalleybrewery_kyoto/






担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp