前回はホテル・旅館の危機管理マニュアルについて、従来型のフローチャートと文字での説明型と動画やクイズ等を用いた比較的短時間で直観的に伝えるONLINEマニュアル型の対比を通じてそれぞれの利点をご説明しました。今回はこのシリーズ最終回として危機管理のトレーニングのあり方についてご説明をします。
1.マニュアル作りと説明で終わってしまっているホテルがほとんど
ONLINEマニュアルや本格的なフローチャートはホテル・旅館内でのトレーニングに適しているといえましょう。しかし、一度説明したから充分と言えるでしょうか。すべてのスタッフが危機管理について繰り返し学習して、スキルを身に付けておく必要があります。
筆者の知る限りでは、多くの場合、管理部門が作ったマニュアルを各部門に配布し、それで終わっているか一部の支配人、キャプテンレベルへの教育を一度行なって、そのままになっている場合が多いようです。これはホテル・旅館に限らず、自治体やメーカーなどのもいえることです。
また、マニュアルは定期的・また、折に触れて改訂することが求められます。一般的には次の場合に改訂が必要です。
2.マニュアルの定期的・折に触れての改訂
(1)建築基準法、消防法などのホテル・旅館をめぐる法令に変更が生じた場合
ホテル・旅館はいろいろな法令によって建物構造や、防災に関連して規定されています。そうした法令が改定された場合、危機管理マニュアルも変更が必要です。法令に違反しない内容になっていることが、最低限必要です。スプリンクラーのあり方、防火扉のあり方、非常階段などなど、法令の改定によってホテル・旅館が行うべきことは数多くあります。経営者レベルだけでなく、支配人、キャプテン等の現場の方々も気づき、管理部門や本社に確認をすることが必要です。
(2)ハード・ソフトなどに変更がある場合
例えば建物構造、調理器具や調理方法、客動線・接客動線の変更などに伴っても、オペレーションの変更が必要になります。結果として、危機管理マニュアルの部分改訂やその周知が必要になります。
上記は状況に変化が生じた場合に改訂するということです。また、定期的なチェックによって現実的な危機管理マニュアルになっているかを検討することも必要です。できれば信頼のおける外部コンサルタントなどの力を借りると良いでしょう。
3.危機管理をめぐるトレーニングのあり方
今回記事の主眼はあくまでも、危機管理をめぐるトレーニングのあり方です。ここでは、提言と具体的な方法論に分けてご説明しましょう。今回はホテル・旅館内での危機管理に関するトレーニングのあり方について理解を深めて参りましょう。
(1)危機事態に陥った時に役立つトレーニングの要素
このシリーズ第1回目の危機管理をめぐる理論の内、「フィンクのリスク予測図」の4分類などを参考にすると、ある程度はリストアップが出来ます。しかし、ホテル・旅館内の危機はあらゆるところに潜んでいます。潜んでいるという言い方は、どれほど詳細なリスク分析をしても予防には限界があるということでもあります。
例えば、ホテル・旅館、レストラン等に大打撃を与えた新型コロナウィルス(Covid-19 以下、「コロナ」と称す。)は、発生する前にはこれほど大きな感染症が発生するとは多くの人が考えていませんでした。食材の感染症である狂牛病や鳥インフルエンザも重大でしたが、コロナによるパンデミックは、多くのホテル・旅館、あるいはレストランにとってそれ以上に重大な危機だったことでしょう。
ホテル・旅館は他の事業と比較すると、衛生管理を徹底する必要があるため日頃の備えは徹底しています。しかし、一方ではある時突然に発生してしまう危機(専門用語では、エマージング・リスクと言います。)に取り囲まれていることも事実です。
では、危機事態に陥った時に役立つ日頃のトレーニングのあり方はどのようなものでしょうか。




