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ホテル・旅館の危機管理入門 深山敏郎氏

第3回 ホテル・旅館の危機管理のトレーニングのあり方

2026年03月03日(火)
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1)頭の中でシミュレーションを徹底する
2)日頃から訓練を積んでおく


以上の二点に分けられると考えられます。それぞれの内容をご説明しましょう。

 

1)頭の中でシミュレーションを徹底する
地震・津波・火災・ゲストのお怪我などが起こった場合にどう判断してどう動くかを徹底しておきましょう。これらの危機は突然に起こります。危機管理マニュアルを繰り返し読む(動画であれば視聴する)ことによって、基本が身につきます。

そうした基本に加えて、応用力はどうしたら身につくのでしょうか。これは一般的な接客技術と類似した面があります。経験を積んだ「ベテランの知恵」ということです。新人等は自分が経験したことのない内容を、ベテランとの対話あるいは雑談の中に学ぶことが出来るという考え方です。筆者は旅客機の教官(兼、旅客機のベテランパイロット)のトレーナー・トレーニングを数年間経験させてもらいました。そこで教えてもらった事例に以下のようなものがあります。

ハンガー・フライト
昔のパイロットたちは天候が悪いと「ハンガー(飛行機の格納庫)」に集まって昔話や自慢話をしていたということです。そこで得られる実践的な知識を「ハンガー・フライト」と呼んでいます。そうした時にベテランのパイロットが危機回避をした事例も話された、ということです。

例えば、ベテランが「どこそこの空港近くの気流は急変するから気をつけろ」等と同僚や後輩たちに伝えていたというのです。そこで若手や新人たちは、あたかも自分が体験したかのように重要なことを理解し、危機回避に役立てていたということです。実際にはフライトは行っていないのですが、ベテランの経験談やその危機状況の恐ろしさを疑似体験することが出来たわけです。

ホテル・旅館では秒単位で接客やオペレーションをおり、雑談の機会は少なくなっていることでしょう。しかし、こうした雑談も時には命を救うのです。

筆者の知る中で、このハンガー・ミーティングの考え方を実際の防災トレーニングに応用出来るツールがいくつかあります。その中から今回、以下の「防災シャッフル」をご紹介します。

 

写真提供及び使い方引用元:(c)文平銀座+NPO法人プラス・アーツ【プラス・アーツオンラインショップ:https://plusarts.theshop.jp/】
写真提供及び使い方引用元:(c)文平銀座+NPO法人プラス・アーツ【プラス・アーツオンラインショップ:https://plusarts.theshop.jp/】


このゲームは複数の参加者が、カードを使って楽しみながら防災機器(AED、消火器、屋内消火栓、避難はしご等)、インフラ(ガスメーターの復旧方法、水の運び方、緊急用トイレの作り方等)、食事(紙食器の作り方等)、衛生(キッチンペーパーでマスクの作り方、ポリ袋とタオルでおむつの作り等)が具体的に学べます。(上記「プラス・アーツオンラインショップ」の説明を抜粋)

トレーニングとして、キャプテン等がトレーナーとなって教えることも効果的です。また、気軽に体験できるため、休憩室などに置いておくことも効果が期待できます。ちょっとした空き時間の楽しみとして使ってもらえる可能性もあります。業務マニュアルと違って、肩の凝らない方法であり、専門的な知識が身につく方法です。

このような方法でシミュレーションをしておくことは、現代の「ハンガー・フライト」と呼んでも良いでしょう。
 

2)日頃から訓練を積んでおく
ハンガー・フライトとともに、筆者の提言は「日頃から訓練を積んでおく」ことです。例えば消火器の使い方、AEDの使い方などは、頭の中だけで分かっていてもいざという時に役立つとは限りません。
できる限り、消化や救命の一歩手前までの訓練をしておくことが重要です。消火器の消火剤の噴出時間は、意外に短時間です。従って、狙いを定めてレバーを引くなどのコツがあります。実際の消火器を持って、レバーを引く手前のところまでは全スタッフが経験できることが理想です。

また、AEDの使い方等は各地域の消防署・消防団、あるいはメーカーに依頼をすれば訓練(有償・無償あり)に来てくれます。ごく簡単なものであれば説明や実習を含めても1時間で終わるものもあります。

AEDは、心肺停止状態の人がいる場合に、(早期の)「一次救命処置」(119番で救急車が到着する前に行う心肺蘇生とAED)の一環として使われます。あくまでも早期の「二次救命処置と心拍再開後の集中治療」の前段階で行うことです。

筆者が心肺蘇生及びAED訓練に参加して実感したこと
筆者がこの訓練に参加してみて実感したことは、以下の3点です。

(1)心肺蘇生に入る前に周囲の人に助けを求めること、倒れている人の状況観察確認が重要
(2)心肺蘇生のための胸骨圧迫には想像以上に体力が必要(蘇生に至るまで継続)
(3)上記を踏まえて模擬的な訓練を繰り返すことが必須

その他にも、AEDパッドの貼り方など注意事項はとっさに取扱い説明書を読んで理解することは非常に困難だと考えられます。つまり、頭の中のシミュレーションだけでは不充分なことから、全スタッフあるいはシフトごとに最低3人以上の各職場スタッフに疑似的な訓練をすることが必要と思われます。

 

写真提供(2枚とも): フクダ電子株式会社 https://www.fukuda.co.jp/aed/
写真提供(2枚とも): フクダ電子株式会社 https://www.fukuda.co.jp/aed/

まとめ
以上が筆者の提案する危機管理トレーニング方法です。

今回の記事を執筆するにあたりまして、(c)文平銀座+NPO法人プラス・アーツ様や、フクダ電子株式会社様には、写真のご提供やノウハウ面でご協力をいただきました。心から感謝致します。

この記事へのご質問やアドバイスが欲しい方は遠慮なく筆者にご連絡ください。このコラムはあくまで入門的知識をご紹介していますが、より突っ込んだアドバイスも可能です。内容によっては時間がかかる場合、個別回答でなく(質問者のお名前・所属を伏せて)記事上でご説明する場合もあることをご承知おきください。


筆者
深山敏郎(みやまとしろう)
所属・資格・実績等抜粋:株式会社ミヤマコンサルティンググループ 代表取締役、ホスピタリティ・コンサルタント。ビジネスビデオ「ホテル・旅館のマーケティング」(株式会社 シュビキ)共同監修。全日本能率連盟認定 マスター・マネジメント・コンサルタント、中小企業診断士、日本リスクマネジメント学会 特別会員、日本危機管理士機構 正会員、日本ナレッジマネジメント学会 正会員、健康経営エキスパートアドバイザー、異文化コミュニケーション学会 正会員等。
主要業務:ホテル・旅館の危機管理支援、BCP/コンプライアンス体制構築支援、覆面調査、ブランディング、リブランディング、オペレーション・スタンダード構築支援、各種トレーニング構築・実施。現在ホテレスオンラインにて「ブランドとオペレーション」連載中。
連絡先メール:toshiro@miyamacg.com

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