ニースの伝統では、このようにクリスマスイブにあたる12 月24 日の夜がクライマックスにあたります。クリスマス当日の12 月25 日にはプレゼントを交換し、豪勢な朝食を食べたりもしましたが、24日の夜こそ特別な意味を持っていました。まず毎年、金、銀、パステル、緑と赤…というようにテーマカラーを決めて食卓を豪華に飾り、クリスマスツリーもその色に合わせ飾り付けしていました。それから、ミサが控えているので、いわゆる「脂肪分の少ない」(肉は食べずに25日にとっておく)食事をとりました。このとき私が食べるものは40 年来ずっと同じものです。まずカルドンです。これはこの地方特産の野菜で、バターではなくオリーブオイルで一種のベシャメルソースを作ってあえたレシピを今回ご紹介します。そして、魚料理を少なくとも一品いただきます。最後に13 種のデザートを食べます。この13 のデザートはキリストとその12 人の使徒のシンボルとされています。その中身は自由に組み合わせられますが、必ずとらなければならないものがあります。果物(マンダリン、オレンジなど)、ドライフルーツ(よくキャトル・マンディアンと呼ばれるもので、四つの果物がそれぞれ修道会を表す。アーモンドがカルメル会、イチジクがフランシスコ会、干しブドウがドミニコ会、クルミがアウグスティヌス会)、ヌガー、果物のコンフィ、そしてブレットのトゥルトです。ブレットのトゥルトはニースの典型的デザートで、普通は料理に使う野菜ブレットを入れて作ります。甘くコンフィされた独特のおいしさのあるデザートです。砂糖の量はレシピにより異なります。私は祖母のレシピを採用しましたが、叔父が著書の中で紹介するレシピは砂糖の分量をかなり増やしています。
クリスマスイブは、ニース語で「カシャ・フエック」といい、そのまま訳すと隠し火を意味します。伝統的には、真夜中のミサに出かける前に灰の下に火の粉を隠しておき、ミサから戻ったら再度火をともすのです。そういうふうにして、私が子どものころは、家長である祖母を中心に、叔父たち、叔母たち、いとこ、そして家族ぐるみの友人(ニース大聖堂の主席司祭がいました)を加えて何十人もの人が食卓についていました。11 時ころになると火を暖炉に隠して、自宅屋敷から旧市街にあるサント・レパラット大聖堂Cathédrale Sainte Réparate まで一緒に向かい、キリストの生誕を祝ったものです。カシャ・フエックは、ニース料理の伝統の中で記憶すべき時間であり、このコラムの締めくくりにふさわしい余韻を残してくれることでしょう。