レンタルのウエディングドレスや婚礼和装の鮮度を保つために欠かせないクリーニング。特にシルクやレースなど繊細な素材で作られたウエディングドレスが主流となる中、単なる洗うという行程だけでは済まされない高度な知識と判断力が求められている。常に衣装の立場にたち、気持ちになってベストな状態で仕上げていくために、作業に終わらない職場環境や働くことの幸福感を求めているのが㈲ファッションケアークボタ 本窪田社長だ。
福永 本窪田社長は婚礼衣装にかかわるクリーニングを手掛けられています。まず始めに、これまでの経緯を教えていただけますか。
本窪田 当社は京都の地で創業55 年になります。京都ということもあり着物のクリーニングや補修から祖父が起業し、父は着物に加えて一般クリーニングに着手しました。3 代目となる私はさらにウエディングドレスと婚礼和装を加え26 年になります。
福永 なぜ、ウエディングにかかわる衣装に着目されたのですか。
本窪田 かつては和装もウエディングドレスも自社でクリーニングをされている貸衣裳店さんが大半でした。ところが結婚式のスタイルが洋風化しステージも多様化され、求められるウエディングドレスのスタイルも変化してきました。それまではクリーニングが比較的簡単なポリエステル素材が主流でしたが、シルクやレース、サテンなどポリエステルとは異なる特徴を持つ素材が使われはじめ、専門的なクリーニング技術が必要となってきました。そして、自社でクリーニングを行なう限界の状況となったのです。このとき、婚礼衣裳クリーニングのアウトソーシング化の波が来ると判断し、新たな分野へ挑戦したのです。
福永 ところで専門的分野で分からないのですが、クリーニングにはどのような行程で作業をされておられるのですか。
本窪田 洗い、染み抜き、仕上げ、検品という行程があり、それぞれに専門の職人がおります。ドレスも一点一点汚れがちがいますので、洗い場面ではどのような溶剤を用いどのような洗いをかけたらよいのかを検討します。そのとき“私の肌を見て…”とドレスが自分はこうしてほしいと思っていることを感じられることが大切です。どうしても迷いが生じてしまう時は自分が作業しているそばに置き、ほかの作業をしながらも常にドレスと対話をし、ベストの洗いを見いだしていきます。そしてそれぞれ専門分野の職人をバトンでつないでいきますので、バトンタッチをするために必要なことをさまざまな場面で話をしています。要するに自分の次の行程はお客さまであるということです。もし、誤った判断をしたらそれを元に戻していくための時間を費やすことになるからです。ベストな状態でバトンを渡せる人材育成をすることが私の役目であり、活気あふれた職場環境を作り上げるために大切なことなのです。