ゲストの滞在日数の長期化によって
ウエルネスを訴求する重要度が高まる
相馬 「エビアン スパ」が入ったことで、お客さまの層や要望が以前とは変わってきた部分はありましたか。
渡部 「エビアン スパ 東京」を創るにあたっては、いわゆる“ごほうびスパ”ではなく、宿泊ゲスト、ローカルゲストともに、何度も足を運んでいただけるスパにしたいと考えていました。現在は「エビアン スパ」をご利用されるお客さまの約30%が男性です。また、宿泊ゲストの割合は約50%、外国人比率は約36%と、ビジネスミックスとしてはねらい通りのターゲットに訴求できていると見ています。
相馬さんから「スパは高単価にするべきではない」とアドバイスを受けたこともあり、「エビアン スパ 東京」では高いクオリティーを提供しながらも、何度も足を運んでいただける価格帯をアピールし、より多くのお客さまにリピートしてもらう道を歩むことにしました。
スパ単体でビジネスをするのではなく、スパがホテルのブランドを創り、その結果としてレベニューの向上にもつながるのだという相馬さんのフィロソフィーに沿って計画したことで、「エビアン スパ 東京」はお客さまにしっかりと受け入れられるようになりました。
相馬 ESG の中でもう一つ重要な従業員満足についてお伺いします。ホテルで働くスタッフの健康維持やストレスの軽減に向けた取り組みとして、どのようなことを行なっていますか。
渡部 私たちはお客さまの笑顔を生み、幸せにして差し上げるのが仕事ですから、スタッフも笑顔で働いていなければならないという大前提があります。その実現のためには、スタッフがパレスホテル東京の仕事に生きがいを感じていることが重要です。
装置産業であるホテルにとって設備やデザインは重要な鍵となる要素ですが、最終的に行き着くところはホテルを運営するスタッフであり、それがすべてと言っても過言ではないでしょう。スタッフが明るく楽しく働けて、彼らにハッピーになってもらうために何ができるのかを自身の喜びとして追求できることは、経営の軸としてとても大切だと思います。
スタッフも人それぞれで、仕事と生活のライフワークバランスに対する考え方には多様性があります。それでも常に一人一人のスタッフと向き合って、改善と成長を繰り返していかなければなりません。
相馬 パレスホテル東京にとって、ウエルネスという切り口はどのような役割を担っていると思いますか。
渡部 パレスホテル東京の傾向として、宿泊ゲストの滞在日数が長期化しています。海外のお客さまの場合、3 泊から、長ければ1 週間といったケースもよく見られますし、当ホテルを拠点に国内各所を旅され長期滞在される方もいらっしゃいます。ホテルに滞在する時間が長くなればなるほど、ウエルネスの切り口によるアプローチは今まで以上に重要になってくるでしょう。そこに力を入れていくことで、お客さまの満足感をさらに向上させることができると考えています。
㈱パレスホテル 常務取締役
パレスホテル東京 総支配人
渡部 勝氏
Masaru Watanabe
〈profile〉1987年㈱パレスホテル入社。パレスホテルの宿泊部、レストラン部、バンケット部、販売促進部などを経て、2010年パレスホテル東京開業プロジェクトのホテル開業準備室副室長に就任、同プロジェクトのホテル運営のプランニング全般を担当する。12年3月パレスホテル東京取締役総支配人に就任。現在に至る。
㈱CA Holdings
代表取締役
相馬順子氏
Yoriko Soma
〈profile〉1990年ボストンコンサルティンググループ香港オフィスに赴任。94年よりコンサルティング会社、調査会社、投資会社を次々に設立。2002年スパのコンサルティング会社Conceptasia社に出資、世界の著名ブランドスパを次々に世界各地にオープンさせてきた。06年スパ専業メディアであるスパファインダージャパンを米国のスパファインダー社と合弁で設立、世界のスパ情報を発信するスパファインダージャパンのCEOに就任。現在はウエルネス事業を取りまとめる㈱CA Holdingsの代表取締役。