ホテル椿山荘東京では昨今のインバウンド観光客の増加、そして2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックにむけて、また既存の国内のお客さまへのおもてなしの一環として、プラザ棟、タワー棟を始め、料亭「錦水」のロビー内に喫煙専用スペースを設置するなど積極的な分煙環境整備を行った。加えて、従業員の労働環境に於ける分煙環境整備を行うなど顧客満足度の向上のみならず従業員満足度の向上に於いても注力した注目の事例である。
ホテル棟3階:かつてはフラワーショップだった場所に喫煙専用スペースを新設。入口からすぐの場所にあり、ロケーションも最適だ
日本有数のラグジュアリーホテルとして国内はもちろんのこと、海外からの旅行客にも根強い人気を誇る「ホテル椿山荘東京」。2013年、それまでの「フォーシーズンズホテル椿山荘 東京」と「椿山荘」を統合したリブランド後もその人気は衰えるところを知らず、インバウンド観光客のシェアにもほぼ変動がないという。特に欧米系からの観光客の人気が高く、アンケートなどでも在京の外資系ラグジュアリーホテルと並ぶ人気を誇っている。
ホテル棟3階:絵画を飾ることにより、殺風景となりがちな喫煙専用スペースに彩りを添え、一方は擦りガラスにより開放感を担保している
人気、実力共に日本のリーディングホテルのひとつでもある「ホテル椿山荘東京」が他のラグジュアリーホテルに先駆けて積極的に取り組んでいることの一つが、分煙環境の整備によるおもてなしだ。これは顧客満足度の向上はもちろんのこと、2020年に控える東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えた取り組みでもあり、経営母体である藤田観光㈱は「ホテル椿山荘東京」だけでなく、過去、箱根ホテル小涌園、箱根小涌園ユネッサンなどにおいても分煙環境の整備に取り組んでいる。
そんな「ホテル椿山荘東京」が昨年から今年にかけて、以下のような分煙環境の整備を進めた。どのような点に配慮して今回の新設及び改装を行ったのかを、宿泊支配人の辰巳哲一氏と施設管理課課長の田中浩章氏にお聞きした。
プラザ棟のエントランス:かつてはタクシーを待つ顧客との間に仕切りが無かったが、ルーバーとの仕切り壁の設置で吸う人も吸わない人も快適に
まずはホテル棟3階(屋内)、プラザ棟のエントランス(屋外)に設置した喫煙専用スペースだ。ホテル棟の喫煙専用スペースは、外への煙の漏れを防ぐ計算された排気風量の確保など、徹底したハード面の整備はもちろんのこと、殺風景となりがちなスペース内に絵画を飾ったり、屋外を望めるようガラス壁にするなど気分豊かに喫煙して貰える工夫がなされている。プラザ棟エントランス横の喫煙専用スペースには、視覚的にもホテル椿山荘東京のイメージに溶け込むルーバーによる仕切りを設置。外からの視線は遮りながら、中からは外が望めるため、中の喫煙者も付近を通過する非喫煙者も不快な思いをすることがない環境となっている。
プラザ棟のエントランス:ベンチもあり、ここでは喫煙タイムが憩いの時間にもなるように配慮されている
次に、労働環境の改善である。顧客向け同様に、社員食堂の喫煙専用スペースを改装したのだ。スペース内を快適な環境とするため、排気設備はもちろんのこと、壁面にはたばこのニオイを吸収するクロスを使用するなどの配慮がなされている。労働環境へまで分煙環境整備が十分になされるのは難しい場合もあるが、このような取り組みは休憩時間の充実を図ることにもなり、お客さまへのサービス向上の一助にもなるのではないだろうか?


そして最後に、この度画期的な改装が行われたのが国内外を問わず数々のVIPをもてなして来た料亭「錦水」のロビーに設置された喫煙専用スペースである。すぐ横にはソファなどウェイティングに使われるスペースがあるわけだが、従来の設計を活かし、自然とロビーになじむデザインが導入されていることで、まるで当初からそこにあったかのような、主張しすぎない自然な形での新設を実現している。さらに、外の庭園からは中で喫煙する姿が見えないように工夫がされつつ、室内の利用者から庭園の風景が楽しめるように、擦りガラスと格子を使った造作による配慮がなされている。
因みに料亭「錦水」、ホテル棟の喫煙専用スペース共に驚くのが、中に入った際に、ほとんどたばこのニオイを感じないことだ。これは、中で過ごすお客さまの快適性を重視し、計算された換気機能を実現したたまものだといえ、今後新たに分煙環境を整備しようとしている宿泊施設には、是非参考にして欲しい施設の事例であるといえよう。
右から宿泊支配人 辰己哲一氏、施設管理課 課長 田中浩章氏
ホテル椿山荘東京
http://hotel-chinzanso-tokyo.jp/