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第18 回 今村慎太郎  本当のアレルギー対応を識る 

第18 回 マクドナルドの進化

【月刊HOTERES 2016年12月号】
2016年12月09日(金)
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全国47 都道府県の生の声を直接伺う
タウンミーティングwith ママ”
 
「2015 年にCEO のサラ・カサノバが47 都道府県のお客さまと対話する“タウンミーティングwith ママ”という活動を行ないました。これは、一般のお母さま方にお声掛けさせていただき、各都道府県のキー店舗で、座談会形式の対話をするという活動です。テーマは決まっておらず、マクドナルドについて360 度の視点で意見をいただきました。意見交換の場にはCEO と共に各部署からも出席したのですが、この活動で食物アレルギーに関する意見が多く寄せられました。そして、食物アレルギーについてマクドナルドがすぐにできることはないかと検討がスタートしたのです」
 
 今や珍しくない食物アレルギーの人たちからの意見はどこの外食企業にも存在しているでしょう。この生の声を受け、マクドナルドは何を行なったのか。
 
「アレルギー検索機能の強化をはじめに進めたかったのですが、時間もコストもかかります。そこで、まずは“食物アレルギーのご心配がある方は従業員にお問い合わせください”という表示を店舗のレジ前に掲載しました。また、お子さま向けの商品であるハッピーセットで進められることはないかと考えました。具体的には、ハッピーセットのアレルギー情報を店舗のスタッフが説明しやすいよう資料を改良し、WEB サイトのメニューページにも情報を掲載してお客さまにも確認いただきやすいようにいたしました」
 
背中を押す風が吹いた
 
 日ごろから意見交換させていただく外食企業の方々から「食物アレルギーのある方たちに対して何かしたい」と言ってくださることがよくあるものの、多くの場合、そこから一歩踏み出せない状況があります。そして、マクドナルドの担当の方々もこれまで同じ状況でした。
 
「アレルギー検索機能強化は前から進めたいことでした。しかし、これまできっかけがありませんでした。検索機能強化については、これまでの開示情報から一歩踏み出す対応であり、実行にあたってのタイミングを見極めることが必要だったからです(今回のアレルギー検索機能強化は「アレルゲンを使用するメニュー」検索機能に加え、「アレルゲンを使用しないメニュー」検索ができるシステムになっています)。アレルギー情報を開示するということは、企業にとっては食物アレルギーがある方たちに向けてというよりは、社会全般への情報開示という視点が強くなっています。そのため、検索機能強化は、関連法規やガイドラインといった関連する社会的ルールを超えた情報開示をすることになり、ハードルが高くなるのです。また、コストの面でも経営全体からみた優先順位もあります。それが、タウンミーティングwith ママでいただいた生の声により「これは必要なことである」との認識が高まり、すべてにおいて“お客さま目線”で見直しを図り、徹底していくという方針が示されたことも、この取り組みを進める上で大きなポイントになりました。このとき、担当の皆がやるべきときがきた、まさに“風が吹いた”と感じました」
 
 進めたかったことができる環境になったものの、具体的に進める段階になると悩みもあったようです。
 
「食物アレルギーの方が検索機能に求めているのは『特定のアレルゲンが含まれていないメニューが簡単に調べられること』であると理解していましたが、食物アレルギーの人たちの要望はさまざまです。すべての食物アレルギーの人たちに対応した機能にすることは難しいものの、それでも大多数の人たちにとって使いやすいものにするにはどうしたらいいのか、と悩みました。細かな情報までを提供すれば判断していただけるのかもしれませんが、一方で分かりにくく不親切な情報提供にもなりかねません。検索機能強化を進めるにあたって、この線引きをどうしたらいいのか、社内で検討しても明確な答えが出なかったのです」
 
 この機能強化をするにあたり、私も打ち合わせの場に参加させていただきました。そのときのマクドナルドの方々の分かりやすく、使いやすく、そして誤解なく情報提供できるのか、と真剣に悩み答えを出そうとしていた姿がとても印象的でした。
 
積極的な対応に店舗の対応は…
 
 積極的な食物アレルギーの人への対応は企業にとってはリスク対応です。特に今回マクドナルドが行なった“食物アレルギーの方に問い合わせを促す表示”は、私のこれまでの経験からも、外食企業にとっては踏み込みたくない領域です。その点について、以下のように話してくれました。
 
「レジの“お問い合わせください”掲示については、タウンミーティングwithママでもお母様たちに聞いており、あったらうれしいという意見をいただいていました。同時に、店舗のスタッフにもヒアリングをしました。この掲示をすることで、店舗の反応は二つに分かれるだろうと予想していました。一つはクルー(アルバイト)たちが大げさな対応をしてしまうのではないかという不安的な反応、もう一つは、店舗の対応としてはこれまで通り(マクドナルドでは店舗で食物アレルギーがある方からの問い合わせがあった場合、店舗マネージャーがお客さまと一緒に特定原材料の情報を確認する作業を行なっている)であるため問題ないという反応です。実際、これまでの食物アレルギーの方への対応に変更が生じるわけではなく、店舗での告知強化を図っただけなので、店舗からは後者の問題ないという反応が多かったです。この告知によって、少しでもお客さまが安心してお召し上がりいただけるようになればと考えています。また、正確な集計数が出ている訳ではありませんが、検索機能強化がなされてからのカスタマーセンターへのアレルギーに関する問い合わせは減っているように思います」
 
アレルギー対応の進化に必要な
チームワークと改善の意識
 
 最後に、アレルギー対応を進める上で必要不可欠だと私が思っていることの一つが「チームワーク」。マクドナルドからはいつもチームワークの良さを感じていました。そして、マクドナルドに染み付いているという「改善のDNA」。この二つがそろっていたからこそ、“風が吹いた”あと、短期間でマクドナルドは進化したのでしょう。
 今年1 年間お読みいただきありがとうございました。年末年始はたくさんのお客さまを迎える時期になると思いますが、食物アレルギーの人に対応する際は安全第一を念頭にご対応お願いいたします。
 

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