LP ガス、カセットこんろ大手、岩谷産業からこのほど、カセットガスホットプレート「焼き上手さん」専用の「HOME CHEF PLATE(ホームシェフプレート)」が発売された。鉄板焼きを家庭でも楽しめるよう開発した商品だがプロの料理人たちからも熱い視線を向けられており、HOTERES EXPO2025 でも来場者から高い関心を集めた。同商品について岩谷産業㈱マーケティング部長の本山氏と新商品開発担当の山崎氏に開発の経緯や商品特徴について伺った。
──このたび岩谷産業から新商品の「ホームシェフプレート」が登場しましたが、どのような趣旨で開発した商品なのでしょうか。
本山 この商品は、既存のカセットガスホットプレート「焼き上手さん」の専用プレートで、家庭で本格的な鉄板焼きが楽しめるよう開発した商品となっています。ハレの日やお祝いに鉄板焼き専門店に行かれる方もいらっしゃると思いますが、そのおいしさを自宅で再現したいと考えました。
山崎 もともとは一般ユーザー向けに、プロが使うような質の高い調理道具をコンセプトに開発したもので、開発過程では料理人の方にも意見を伺いました。2024年7月に「Makuake」でテスト販売を行なったところ1000万円を超える応援購入いただき、それだけ本格的な調理をしたいというニーズがあることを改めて実感しました。また業界向けの展示会にも出展したところ、反響が大きく、飲食業界向けの提案にも力を入れ始めております。
──次に具体的な商品特徴について教えていただけますか。
山崎 アルミクラッド三層鋼という素材で作られたプレートを、ガス火に乗せて使うので、肉をおいしく焼くことができることが最大の特徴です。ガス火は火力が強く予熱時間も約5分と早く、火力も無段階で調整できます。また、カセットコンロなのでガスの配管や電気の配線工事の必要もなくどこにでも設置できるのもメリットです。
本山 最初は鉄製のプレートを検討しましたが、厚いと重くなりカセットこんろの耐荷重を超えてしまい、薄い鉄では焼きムラが出てしまいました。そこで鉄に変わる素材を探す中、質の高い調理器具をつくっている新潟県の燕三条のフジノスに出会ったのです。
今回採用したアルミクラッド三層鋼という素材は、アルミをステンレスでサンドイッチしたものです。アルミの熱伝導のよさ、ステンレスの蓄熱性の高さなど両方のいいとこ取りでプロ向けの鍋などにも使われています。プレート全体が温まる均熱性、鉄よりも軽量、見た目の美しさも利点です。表面はステンレスなので金属製のナイフやヘラも使えます。高品質な国産商品というのも魅力だと思います。開発に当たり、このプレートで肉を焼くとどのような効果があるのかを社外の分析センターで解析しましたが、より旨味や香りが強くなることも確認できました。


──そのほか開発に当たって、ご苦労されたことがありますか。
本山 実はカセットこんろで鉄板プレートを使うことは安全上推奨されていません。その理由はプレートが温まって蓄熱すると、輻射熱によりカセットこんろの土台が溶けたり、最悪の場合はガスボンベが爆発する危険をはらんでいるからです。この問題はプレートに脚を溶接して安全性を確保する高さを出すことで回避しました。ステンレスに同素材の脚を溶接するのは技術的に難しいのですが、それをクリアして厳しい社内審査にも合格しております。
また、プレートの長方形という形状は歪みが生じやすいという問題点もありました。これもフジノスの技術で解決しました。平らな鋼板を油圧圧力でプレスして成形するのですが、われわれも現場に行って納得がいくまで調整しました。このように試作と設計の段階で相当な課題があり、それを乗り越えてようやく商品化にこぎつけることができました。
──これまでの常識を打ち破る商品だったのですね。料理人たちからはどのような反響がありましたか。
山崎 業界向け展示会では、ホテルの料理長や料飲担当の方々にブースの中で最も関心を寄せていただいたのがこの商品でした。そのときプロの方にもニーズがあることを確信しました。レストランの客席で肉料理を切り分けるデクパージュや、宴会場で使いたいというお声が最も多かったですし、ガスホースや電気コードがいらないのでガーデンやプールサイドでのイベントやパーティー、ケータリングにもよいのではと話されていました。
先行的に購入いただいた企業では鉄板焼きのトレーニングなどにも使われるそうで、私たちが思いもよらない使い方もあるのだと商品のポテンシャルを感じましたね。
──今後、どのような商品を開発してきたいとお考えですか。
本山 われわれが所属するマーケティング部は、新商品開発部と市場調査部が統合されて昨年4 月に発足しました。この部署に求められるのはいままでアプローチできていなかった顧客層に向け、新しい商品やサービスを開発し、開拓していくことです。ホテル・レストランのマーケットにも注目しておりますので、ぜひ、今後の取り組みにご期待ください。
【サンプルお問合せ先 】岩谷産業㈱ マーケティング部 新商品開発担当 山崎
取材 オータパブリケイションズ 渋谷 大紀 shibuya@ohtapub.co.jp / 文 アクセント