秋の訪れと共に新たに提供を始めたディナーコース「凛~りん~」。前菜のあわびひとつとっても、一皿として成立するほどの贅沢さで提供。その他、「銀座楼蘭」自慢の料理に加え、国産の特大椎茸を器に見立て帆立と海老を蒸し上げた一皿や、国産和牛を自家製蒸しパンで挟みオニオンソースで仕上げたサンドなど、「銀座楼蘭」の精華を堪能できるコースだ
2023年、新たに復活を果たした「銀座楼蘭(以下、「楼蘭」)」。創業者の‟日本人の口には広東料理が合う“という信念のもとに培われた味を継承し、現代の感性を取り入れた広東料理を提供する名店である。
1971年に創業した旧「楼蘭」が一度店の幕を下ろしたのは、コロナ禍の中にあった21年初春。リーマン・ショックや東日本大震災以降、景気の低迷や後継者不足を背景に、かつて“名店”と呼ばれたレストランが全国で閉店を余儀なくされてきた中でも、最も多くの店が廃業を選んだ時期にあたる。そんな中、常連客やファンが中心となって店を復活させる動きも見られるようになったが、「楼蘭」のような高級レストランが、事業承継ではなく、元々のお客さまの手により再生された例は極めて稀だ。
そんな多くのファンの心に残る「楼蘭」を復活させたのは、㈱ジャパンダイニング代表取締役の江連昌愛氏だ。江連氏にとって同店は、幼少期から父に手を引かれて何度も訪れ、家族で囲む外食の記憶としても深く心に刻まれている店だという。そんな同店が閉店するとの一報を耳にした際は、その思い出と共に大きな喪失感があったという。その思いが当時のスタッフたちへの賛同につながり、1年半の準備期間を経て再び灯をともすに至った。ちなみに江連氏はこれまで飲食店経営の経験がなく、また家業でもない中での挑戦だったといい、いかにその思いが強かったかがうかがえる。その後、調理場もサービスも旧「楼蘭」のメンバーが集結し、新生「銀座楼蘭」を誕生させた。以前の料理を踏襲した料理、そしてサービスを提供し、古くからのお客さまの舌を喜ばせてきた。
エントランスに掲げられた店名の書画は、江連氏と共に家族の想い出を紡いできたご母堂の筆によるもの。同店の新たな門出を祝い、スタッフと共にお客さまを出迎えながら、これからの歩みを見守っている
一方で、革新することにも意欲的に取り組み、新たな食材の出会いも積極的に模索。今秋は希少な‟カウアイシュリンプ“を使ったチリソース煮が登場し、新たな楼蘭の味わいを提供した。さらに、中国伝統の紹興酒に上質な抹茶を合わせた和洋中折衷のオリジナルドリンク‟抹茶紹興酒ハイボール“も登場し、伝統と革新が融合した新たな「楼蘭」の魅力を彩っている。
店内は居心地のよいサロンのような空間となるようにこだわっており、おひとりでお食事されるお客さまにも気軽に訪れてもらえる雰囲気を大切にしているという。その思いを反映するように、エントランス隣にはお酒を楽しむだけでなく、食事もゆったり味わえる鮮やかなイタリア製タイルが彩るカウンターとウエイティングバーを設けた。こうした温かいホスピタリティに、実際、スタッフとのおしゃべりを楽しみに足を向けるお客さまも少なくないそうだ。
他のお客さまと対面することなく入室できる個室や最大40名まで貸切可能なホール席など、カフェタイムから接待や会食、パーティなど、さまざまなシーンに対応できる体制も整えている。そんな同店を江連氏は、「お客さまが三代先の世代まで‟味“でつながり、かつ‟銀座で中華といえば『銀座楼蘭』“といわれるような店に育てていきたい」と語る。
ぜひ、多くの人々の思いによって復活した新生「銀座楼蘭」に足を運んでみてほしい。
「銀座楼蘭」
https://www.ginzarolan.com/








取材・執筆 毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp




