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2020年4月10日号 新しい視点「ホテルの価値」向上理論 ホテルのシステム思考

第394回 外部環境に大きな変化が生じた場合の賃貸借契約の解釈

【月刊HOTERES 2020年04月号】
2020年04月08日(水)
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賃料の概念には「新規賃料」と「継続賃料」があります。「継続賃料」とは、賃料改定を前提に、(1)継続中の建物およびその敷地などの賃貸借等の契約に基づく実際支払賃料を改定する場合の継続賃料と(2)契約上の条件または使用目的が変更されることに伴い賃料を改定する場合の継続賃料とに分かれます。継続賃料とは「特定の当事者間」における事業の継続を前提とした賃料であり、通常の合理的な市場を前提とする「正常賃料」(新規賃料)とは区別します。正常賃料であれば、経済的合理性を追求する複数の需要者および供給者を前提とした市場賃料を求めることになりますが、継続賃料は当該契約当事者間において妥当と判断される賃料を適切に求めようとするものであって、特に契約当事者間における「衡平性」が重視されることになります。賃料増減額請求に関しては、「最高裁判例平成16年6月29日判決」にて賃料増減額請求に対する法解釈が改めて示されています。
 

当該判例は「減額請求の当否および相当賃料額を判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、本件特約の存在はもとより、本件各賃貸借契約において賃料額が決定されるに至った経緯や本件特約が付されるに至った事情等をも十分に考慮すべきである」と賃料算出に当たっての判断根拠を明示されました。また、賃貸借契約条項には、賃料自動改定特約が付されることが多く、賃料増減額請求に関連して賃料自動改定特約の法解釈については、当該特約自体は「契約自由の原則(※自己の意思に基づいて自由に契約を締結できるという、近代法の原則)」があり、公序良俗に反しない限り有効なものとされるものの、当該特約が基礎としていた「事情」が変化した際には、「不相当」と判断される場合には、当該特約に縛られず賃料改定が可能と判断されることになります。この「不相当」について、整理しますと以下の通りとなります。

 事情変更の原則の考え方を借地借家法の中で権利として認められたものが賃料増減額請求権(借地借家法第11条、同法第32条)であり、賃料増減額請求権の要件として、現行の賃料が客観的に見て「不相当」になっていること、前回の改定から相当の期間が経過していること、増額の特約がないこと(不減額の特約、つまり将来にわたって賃料を減額しないという規定は強行規定に反しており無効とされるが、不減額特約が付された当初の事情は勘案されることになる)が求められており、「不相当」の解釈について借地借家法第32条1項を再度確認すると、ホテル自体を賃借する、つまり借家のケースでは、土地および建物に対する公租公課の増減があること、土地および建物価格の高低やそのほかの経済事情の変動があること、そして近傍同種の建物の家賃と比較し不相当となっていることを、判断要素として例示されています。ただしこれらはあくまで例示に過ぎず、それらが認められれば直ちに増減額請求権が発生するというものではありません。

 上記の通り、当事者を当初の契約条件に拘束することが前記信義則に沿わないと判断される場合において認められるものであることから、契約当事者間の個別事情を総合的に鑑みて個別に判断されるべきものと解釈されます。このように「不相当」の判断に当たってはそれら「契約の経緯」が考慮対象の中心となっているのです。この「契約の経緯」が重視される理由は、増減額請求が論点となる場合、特定の当事者間における事業の継続を前提とした賃貸借であることから当事者間の「衡平性」が重視されるべきとの考えがあるためで、当事者間にとって衡平と言える判断を行なうために、当初「契約の経緯」を含めて十分に斟酌(しんしゃく)されることになります。「契約の経緯」を考慮することとは、賃貸借契約の当事者が賃料決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に勘案した結果、不相当となることが必要となります。

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