三国港で越前がに漁が解禁となり、福井県坂井市を代表する冬の味覚を本格的に楽しめる季節が到来した。暖流と寒流が交わる豊かな海域で育つ越前がにを北陸で唯一、海岸線に湧く温泉郷である東尋坊三国温泉とともに味わう“至福の時間”を提案すべく、DMOさかい観光局がプロモーションを進めている。
“三国港越前がに”は言わずと知れた皇室献上品として知られる高い品質を誇る蟹であり、本年は大正11年の初献上から100回目を迎える記念の年を迎えるプレミアムな蟹だ。身の締まりと濃厚なかにみそが特徴で、地元では茹で加減や塩の調整を熟知した職人の技により、素材の持ち味を最大限に引き出した“産地ならではの一杯”を味わえる。
また、解禁日から12月31日までの限定漁期で味わえるセイコガニ(メスのズワイガニ)や、2月19日から3月20日の漁期限定で登場する水ガニなど、一口にズワイガニといっても、時期ごとに彩り豊かな味を楽しむことができるのも、ズワイガニの魅力だ。
写真を見るだけでも心が華やかになるズワイガニ。画像下左は、献上蟹としても知られる雄の“三国港越前がに”。甲羅につくカニビル(茶色い円形の付着物)が多いほど、脱皮から時間が経っており、美味しいとされる。右の画像は雌の“三国港せいこがに”。13回の脱皮を経て成長するといわれ、外子はもちろん、赤いダイヤと呼ばれる内子も格別だ
そして、この越前がにと共に注目したいのが、北陸で唯一、海岸線に湧く温泉郷である“東尋坊三国温泉”だ。同地の泉質は、人体の浸透圧に近いアイソトニック系であり、湯の成分が肌へ過度にしみ込みにくいため、体への負担が少なく、長湯でも湯あたりしにくいのが特徴だ。源泉温度は68.3度と高いが、湯口では42度で供給されるため、加水を必要としない“真の源泉かけ流し”を楽しめる。また、湯上がり後のコンディションが整うことから、食事をより良い状態で堪能できる点も利点であり、三国温泉は“美食を引き立てる温泉”だといえ、‟海、温泉、美食“が一つにつながる冬の坂井市は、訪れる価値を実感できる時間が揃っている。
北前船の寄港地として名をはせた三国港。漁船は夜中に出航し、水揚げされた蟹は夕方に帰港後すぐにセリにかけられる。この流れにより、鮮度の高い越前がにが供給される点も、坂井で蟹を味わう大きな魅力だ。三国港をはじめとする福井の海で水揚げされた蟹には地理的表示(GI)タグが付与され、中でも厳選されたものには“極”の特別なタグが付けられる
ちなみに、越前がに以外にも、冬の坂井市には魅力的な味覚がそろう。まず挙げられるのが、福井でも希少な在来種を使う丸岡そばだ。晩秋から冬にかけては新蕎麦の季節でもあり、丸岡在来特有の香りとキレのある風味を最良の状態で楽しめる点は、冬場に現地を訪れる大きな魅力だ。
また、日本酒文化も外せない。福井は全国有数の米どころとして知られ、酒造りに適した良質な米と水に恵まれている。こうした環境のもと、「久保田酒造」をはじめとした同地の酒蔵では、海の幸にも山の幸にも寄り添う酒が醸されており、とりわけ冬は“新酒”が登場する季節だ。しぼりたてならではのフレッシュな香りや躍動感ある味わいは、冬旅の楽しみをさらに豊かにしてくれる。さらに近年では、鹿や猪などのジビエを堪能できる点にも評価が高まっている。
越前がにの濃厚な旨味と在来種ならではの新蕎麦、仕込みたてのさわやかな日本酒に冬ならではのジビエ。こうした“海・里・山の美食を一度に味わえる”点に、冬の坂井市を訪れる旅ならではの醍醐味を感じる。
今回、同DMOは都内アンテナショップで冬の坂井グルメの魅力を訴求するべく、‟かにかに in 東京 スタンプラリー“を開催するなど、都市部で地域の魅力に触れる機会をDMOが作り、現地訪問への動機づけを図る取り組みを実装した。成功事例がまだ少ないとされる日本のDMOにおいても有益な試みであるといえる。今後も同DMOの取り組みに注目していきたい。
「さかい旅ナビ」
https://kanko-sakai.com/
「“美食都市アワード”受賞の坂井市、表参道で甘えびグルメを期間限定提供!」
https://www.hoteresonline.com/articles/14297








取材・執筆 毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp




