今回のイベントでフィーチャーされた食材から、上三輪町で水揚げされる‟山太郎ガニ“。上海蟹を彷彿とさせる濃厚で旨味と甘味の深い味噌に、身は栗ガニのような繊細な繊維質と旨味を感じる、‟至福の蟹”といっても過言ではない美味しい蟹だった
‟東九州バスク化構想“を推進する宮崎県延岡市が、丸の内のレストラン「カサブランカシルク 丸ビル 丸ビル」にて、食の発信イベント‟FOOD TRIP NOBEOKA“を開催した。本イベントは、延岡の食材や料理人の魅力を都市部に紹介し、地域への関心や訪問のきっかけを創出することを目的とした取り組みだ。
同市が推進する‟東九州バスク化構想“は、美食の地として知られるスペイン・バスク地方をモデルに、‟食”で人を呼べる地域づくりだ。海・山・川の恵み豊かな延岡市と隣接する大分県佐伯市が、‟食“と‟連携”をキーワードに新たな経済・文化圏の形成を目指し、2016年の‟東九州バスク化構想延岡推進協議会“発足以来、世界一の美食の街として知られるサン・セバスチャンをロールモデルに掲げ、‟九州のサン・セバスチャン”と呼ばれる地域へと成長させることを目標として取り組んできた。
こうした取り組みの中で、市内の料理人と生産者が連携して開発した創作小皿料理‟のべおかタパス“をはじめ、官民による食をテーマとした多様な施策が展開されている。都市部への情報発信も継続して行われており、今回のイベントもその一環だ。
イベント当日は、延岡から招いた3名のシェフが、現地の旬の食材を用いたコース料理を提供した。それぞれの皿には、地元酒のペアリングが合わせられ、生産者の背景や食材の特性に触れながら、延岡ならではの食文化を東京で体験できる内容となった。
今回のイベントに延岡から来京した、シェフたち。写真左から、「パスタ&カフェ コッコロ」 藤本訓啓氏、「中国酒菜 杉山」杉山福徳氏、「和食 勇魚(いさな)」の富山康朗氏
ところで今回筆者がお伝えしたいのは、延岡の食文化やさまざまな観光資源が非常に魅力的であったという点に加え、地方自治体の発表会として秀逸だったという点だ。
まず、プレスキットやメニュー構成、当日のプレゼンテーションが洗練されており、視覚的にも“延岡の世界観”が魅力的に組み立てられていた。それらは参加者の延岡への関心を高めるとともに‟いつか訪れてみたい“という想起を促す内容であったことに加え、提供された料理と地元酒とのペアリングも秀逸であり、発信意欲を刺激するものとなっていた。
次に、こうした地方発の食の魅力を都市部へ伝える発信イベントにおいては会場選びも重要だ。アンテナショップ内の飲食店を活用するのも良いのだが、キャパやムードが発表会向きでない場合や、‟魅力発信“を主軸に考えた場合はレストランとのコラボがよい場合もある。そういった意味で、今回の会場となった「カサブランカシルク 丸ビル」は東京駅に直結しており、眼前に東京駅の夜景を望む「丸ビル」内という立地にあるためアクセス性が高く、天候が悪い場合などでも参加者にとっての負担軽減につなげられる利点がある。また店内はアンティーク家具がセンス良く配されており、落ち着いた空間だ。料理提供も同店が所有する和食器のアンティークコレクションを用いることが出来るため、料理に重厚感を加えることもできる。
今回のイベントのテーマは“テーブルで旅する延岡”。ゲストは受付で自分の名前と座席が明記されたチケットを受け取り、それぞれの席に“チェックイン”。併せて渡された‟旅のしおり”には、当日のメニューや食材のリストが明記されており、インスタグラムのアカウントを持つものについては合わせて確認できるようになっていた
このように単に料理を味わうのではなく、‟体験に付加価値を与える空間“でイベントを実施することは、地域が伝えたい魅力を“記憶”として残すことにつながる。そしてその記憶が地域の魅力を伝える際のモチベーションとなり、結果として、情報の広がりへとつながっていく。筆者自身、現地を訪れてみたいと素直に感じ、その魅力をより多くの人に知ってもらいたいと思った次第だ。
今後 延岡市が掲げる「東九州バスク化構想」がどのように発展していくのか、とても楽しみだ。引き続き注目していきたい。
「東九州バスク化構想延岡推進協議会」
https://goodeat-goodlife.jpn.org/
「カサブランカシルク 丸ビル」
https://kiwa-group.co.jp/casablancasilk/










取材・執筆 毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp




