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第217 回 新しい視点 「ホテルの価値」向上理論

第217 回 『世界のホテルインスペクター』

【月刊HOTERES 2016年05月号】
2016年04月28日(木)
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「リッチーインターナショナル」社による
ホテルインスペクション
 
 ミステリーショッパーの調査時間は限られています。その限られたホテル滞在時間の中で、サービスの一回性に評価が左右されないよう、調査員が接したスタッフが、ほかの顧客に対してどのような振る舞いをしているかにも十分に留意し、そのスタッフの「通常」の振る舞いを観察します。また、評価がフェアであるためには、ホテル側に適切なサービス提供をする「チャンス」を与えています。例えば予約電話では、こちらからどのような客室タイプがあるのかと最初には聞かず、会話の主導権をホテル側に委ねます。そして調査に当たっては過度に批判的にならず、またホテル寄りの寛容な評価ともならないよう中庸なスタンスを維持します。客観性の確保、逆に言えば主観の排除については、例えば料理ではおいしいかどうかではなく、ホテルクラスやレストランの格式等に鑑み顧客の事前期待通りに提供されているかを評価しています。レストランのチェック項目では、料理に適した皿等が利用されているか、料理の温度や色合い、ポーションの設定が適切か、歯ごたえは料理を楽しめるよう工夫されているかを含みます。
 
 インスペクションの目的がサービスの質の改善に資することですので、ハードウエアに関する評価においては、デザイン性の良しあしについては容易に改善できるものではないため調査対象外とし、修繕状況や清掃状況についてのみ対象とします。
 
 主観の排除で貫徹されている点は、評価において客観的な事実のみが重要であるという調査スタンスです。例えば、チェックアウト時のスタッフ対応の良しあしを確認する場合には、アイコンタクトの有無や「また来てください」というコメントの有無等の客観的な事実、確認できる内容を調査対象としています。したがってミステリーショッパーのコメント欄を見ますと、ほとんど主語に「I(私)」や「We(我々)」は出てきません。「フロントスタッフの○○氏」等ホテル側のスタッフかホテル自体がほとんどの文章の始まりであり主語となっています。このように、フェアで客観的な視点を貫くことで、ホテル側の「パートナー」として有用な情報をフィードバックできるのです。
 
世界のミステリーショッパーが採用する評価軸
 
 特に同社のインスペクションはサービス要素が重視されるトップクラスのホテルを対象としていることから、サービスやスタッフによる所作を含めた顧客接遇内容を中心とする評価軸が設けられています。すべての調査項目はホテル側の顧客に対する積極的関与の有無、つまり「顧客エンゲージメント(Engagement)のレベルの高さ」を頂点として構成されており、ハードウエアの快適性からサービスメニューの内容と豊富さ、スタッフの顧客に対する対応、振る舞い、制服に至るまで「顧客がそのホテルにおいてどのように扱われているのか」を徹底して調査します。
 
 この「顧客エンゲージメント」を測定するための調査項目を評価次元に分類しますと、大きく「正確性」、「予測力(共感力)」、「エンゲージメント」、「迅速性」、「丁寧さ」、「管理力」に分類できます。「正確性」では、顧客が依頼した事項を正確に反映してサービス提供ができているか、例えばルームサービスを依頼した場合に、依頼内容を再度確認しているか等を確認します。また「予測力(共感力)」では、サービス提供の流れの中で、その顧客が何を求めているかをスタッフが事前に察知しサービス提供しているか、例えば、2 泊以上の顧客が、客室内のサービス提供されているウオーターボトルをすべて開けていれば、初日のハウスキーピングの際にそっと1 本多くセッティングしておく等シームレス・サービスが提供されているかを見ています。「エンゲージメント」では、顧客との会話の際におけるスタッフの姿勢や声のトーン、聞きやすさやアイコンタクトの有無等を確認します。「迅速性」では、電話が例えば4 コール(あるいは3 コール)以内に出ているか、またレストランでは適切な時間で料理提供ができているか等を見ています。「丁寧さ」では、例えば電話口で顧客を待たせてしまうような場合に適切に顧客からその許可を得ているか、それと同時に、お詫びおよびお礼が言えているか等となります。「管理力」では、特にハウスキーピングにおいて埃ほこりのチェックは徹底して行なわれ、清掃の丁寧さや施設の修繕管理力に問題がないかを確認します。それら評価次元にそって、ホテル滞在時に総じて顧客がどのように扱われているか、逆に言えばそのホテルは顧客にどれほど積極的に関与しようとしているか(顧客エンゲージメント)を調査しており、日本的に表現すると「おもてなし」に該当する表現がこの「顧客エンゲージメント(Customerengagement)」なのです。上記評価軸のいずれも非常に重要なのですが、特に「予測力」については、外国人観光客に対して、異なる文化を有する顧客に対してどのようなサービスが必要となのかを察知することまで調査対象に含みます。それら現場の情報を運営管理者にフィードバックすることを通じて、日々のサービス向上に貢献しているのです。同社のサービスを受けているホテルでは、同社の細かなチェックを常に経ているという自信すら感じられます。私が調査を行なったホテルでは、チェックアウト時に、「ご満足いただけましたか?」と尋ねられ、「また来ますね」と伝えると、スタッフから「ご満足していただけたのなら、きっとまたお会いできますね」と返答されました。このように、高いレベルの顧客エンゲージメントが、顧客満足につながり、リピーターとなるという「顧客満足方程式」を同社は提供しているとも言えます。
 

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