「揚州商人」第一号店であり、目黒本店の外観。全店舗に共通する印象的なデザインは、“「揚州商人」といえば!”という存在感を放つ。また、多岐に渡る味の組み合わせも、直営店はもちろんのことフランチャイズ店でも標準化されるよう、セントラルキッチンと‟100本を超えるレードル“を用いた独自オペレーションで実現している
東京を中心に南関東で38店舗を展開する中国ラーメン専門店「中国ラーメン揚州商人」が、公式アプリ会員向けの月額制サブスクリプション“プレミアム会員”を強化した。2020年にスタートした同サービスは、月額税込み300円という価格で展開。累計ダウンロード数は168.5万件を突破しており、飲食店が手掛けるサブスクとしては異例の広がりを見せている。
これまでのデザートや餃子などが無料で注文できる“サービス1”、大盛りやドリンク類が無料もしくは半額で注文できる“サービス2”に続き、今回新たに加わったのは、全14種類の小皿料理が半額で楽しめる“サービス3”。揚州商人ならではの味わいを手軽に楽しめる仕組みとなっている。麺類や炒飯を1品以上の注文で各カテゴリから1品ずつ選ぶことができ、最大で1,640円分がお得になる計算だ。
公式アプリ会員向けの月額制サブスクリプション“プレミアム会員”画面(画像左2点)。右側の画像にあるように、定番メニューのサービスに加え、会員限定メニューの提供やさまざまなイベントクーポンも用意されている
この取り組みを主導するのは、同社創業家の4代目にあたる三好一太朗氏。従来のファミリービジネスの枠を超え、アプリを軸にしたデジタル施策やサブスクリプション導入など、新たな形でブランド価値を高めている。さらに、グループ企業で手掛ける製麺事業の強みを活かし、ラーメンメニューは‟細麺“‟極太麺“‟中太麺“‟低糖質麺“から麺を選べるシステムを導入し、同じメニューでも味や食感の違いを楽しめる工夫をするなど、従来のラーメンチェーンにはない顧客体験を提供している。
このように「揚州商人」では、他の飲食店が提供するサービスと比較した際、多岐に渡る選択肢を顧客体験に反映することで差別化に成功している。また特典は来店時のみ利用できる“来店誘発型”となっており、実際に店舗へ足を運ぶ導線として設計されている上に、季節限定メニューや年間を通じて利用できる仕組みにより、単発的な販促にとどまらず日常的な来店を促す工夫も忘れていない。加えて、価格的メリットだけでなく“本格中華を日常的に安心価格で楽しめる体験価値”を提供している点も特徴だ。さらには昨今の物価高騰で“外食のちょい得感”が求められる中、同店のプレミアム会員は日常的に利用できる安心価格のサブスクとして支持を拡大しており、既存顧客の満足度向上に加え、仕事帰りに軽く一杯楽しむちょい飲み層や外食にコスパを求めるファミリー層など、新たな客層の開拓にもつなげている。
同社の取り組みは、チェーン展開する飲食店が既存メニューを活用し、豊富な選択肢と組み合わせの自由度でサブスクリプションの魅力を高めている点が特徴だ。さらに、事業の継承者が手掛けた新たな取り組みにより、ブランド特性がより濃度高いものに昇華した好例でもある。そんな「揚州商人」が今後、どのような新しい試みを打ち出していくのか? 非常に興味深い。引き続き注目していきたい。
「揚州商人」
https://www.yousyusyonin.com/






担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp