【奨励賞(審査委員長賞)】
㈱ワイス・ワイス
㈱ワイス・ワイス 経営管理部 広報課 野村 由多加 氏
第1回 ウッドデザイン賞 受賞に際し
木の良さや価値を再発見させる製品や取組の中から特に優れたものに与えられるウッドデザイン賞2015(新・木づかい顕彰)の表彰が昨年12 月に行われました。林野庁後援のこの賞は、“暮らしを豊かにする・人を健やかにする・社会を豊かにする”の三つの消費者視点で評価され、木材利用で日々の暮らしと社会を豊かに彩ることの推進を目的としています。

KURIKOMA
東日本大震災の被災地でワイス・ワイスが作りあげた「KURIKOMA」の椅子は、被災地域に生きる人々自身による復興のための家具作りを目的に、地元宮城県栗駒産のスギの特性を生かした独創性溢れるデザインで、ハートフルデザイン部門 審査委員長賞を頂きました。
宮城県栗原市・栗駒木材。杉を専門に先先代から製材業を営んで来た老舗ですが岩手・宮城内陸地震がこの地を襲います。2008 年のことでした。その震災からようやく立ち直ったところを2011 年3 月あの東日本大震災が再び襲います。何か手助け出来ることはないか、震災の翌月ワイス・ワイス代表佐藤は東北沿海部に足を運びます。佐藤の目に入ったのは、深い悲しみに包まれ変わり果てた街と被災地の人々の姿。そこで、佐藤は被災地の復興リーダーくりこま自然学校の代表佐々木さんの紹介で栗駒木材の大場さんと出会います。3 人は夜を徹して語り合います。「復興への道のりは長い。復興が一段落したら被災地の仕事は無くなってしまう。被災地が自立できるように“仕事を通じて" 復興に携わって欲しい。」大場さんの切々とした懇願が佐藤の胸に火をつけます。
CLT 工法
伐採作業から製材作業、家具製造に至るまでを一貫して行い、地元の資源である杉を無駄なく使うこと。栗駒山麓に暮らす人々、更には障害者の方にも家具作りを担ってもらうこと、共に力を合わせ質の高い杉の家具をつくろう!地元住民と手を取り合い一緒に歩み始めます。
栗駒山麓に生息する杉は触ると驚くほどに優しく、柔らかく、温かい。この素材の持つ感触と風合いを生かそう、私たちはこの一点にこだわりました。圧密加工や高温乾燥は使わない、折角の素材の良さを殺し、風合いと香りを損ない、出来上がりは重く、価格も広葉樹並みに跳ね上がってしまうからでした。素材感を大切にし、細い脚でシャープなカタチを維持しながら、椅子として十分な強度を実現する、この矛盾する課題を解決したのが建築にも用いられるCLT 工法の採用です。フレームを三層構造にし、スギの繊維が直交するように組む。こうすることで実にJIS 規格の3 倍という強度を実現しました。針葉樹の弱点とされていたことを逆に強みに変え、軽量で丈夫な椅子の誕生です。
「あっ、柔らかい」「ずっと座っていると幸せな気持ち!」「なんか撫でちゃうね」「初めての感覚、スギってこんな感触なの?」「お祖母ちゃんに勧められたわ」「スギのいい香りがする」「座っていたら頭がすっきりしたよ」「軽くて掃除が楽ねぇ」「これに座ると優しい気持ちになる」、一度座って頂くとこんな嬉しいお言葉がいっぱい。杉を知り尽くしたはずの製材所の職人たちもビックリ。それは連鎖するように、たくさんの人たちを笑顔にしてくれました。
風評被害も重なり未だに行き場を失っている被災地の杉。東日本大震災から5 年、震災の記憶が少しずつ風化してきているこのタイミングでのウッドデザイン賞受賞は、被災地の人々への何よりのエールとなっています。KURIKOMA により現在11 名の雇用が生まれていることを、最後にご報告させていただきます。
「木づかい」は新時代の宝
公益社団法人国際観光施設協会のCSV活動
公益社団法人 国際観光施設協会 会長
株式会社 観光企画設計社 社長
鈴木 裕 氏
「地球は限りある宇宙船地球号」というセンセーショナルな標語を発信したローマクラブの会議から早40年「喉元すぎれば熱さを忘れる」の諺のごとく危機感はすっかり遠のいてしまいました。際限ない人口増加と生活程度の物質的向上は望めないという警告を真摯に受け止め、「もったいない」精神による日本型循環型システムを再考するときが来ました。
国際観光施設協会は「国際観光振興に技術で貢献する」という理念のもとに集まった技術者集団です。観光に役立ち会員企業のためにもなるテーマを選定しCSV活動をしています。「木づかい」チームは前述のコンセプトに基づき国産材利用による林業再生とそれによる地産地消、循環再生型経済の復活による地方創生を目指しています。このたび「木づかい」チームからウッドデザイン賞に多数の受賞者を輩出できましたこと、誠に名誉なことと感謝しています。今後とも当協会のCSV活動をますます活性化していく所存ですのでよろしくお願いいたします。
公益社団法人 国際観光施設協会
http://www.kankou-fa.jp/